【宮侑】後輩に恋路を邪魔される【北信介】

episode16 ページ17

しゅわしゅわと弾ける音

カランッと高い音を鳴らしてビー玉が転がった。








「駄菓子屋のアイスと同じ味やな」


『ラムネとソーダって何が違うんだろ』








花火が上がるまで残り30分、大混雑の中何とか確保出来たベンチに腰掛けて時間を潰す。運良く空いていたそのベンチは屋台の近くで人は多いが、賑やかで楽しい所だった。








「ラムネはソーダの一種でレモン風味らしいで」


『へぇーじゃあ酸っぱいのかな？』







スマホで雑学を調べる侑くんは、画面全然動かへんわぁと文句を言っている。

人が多いから回線が混んでいるのだろう。





私はさっき侑くんに取ってもらったラムネの中のビー玉を手のひらで転がして遊んでいる。今日の思い出として持って帰る予定。












騒がしくなる人混みを後ろに感じながら、ソワソワしている気持ちを落ち着ける。実際に会場に来て花火を見るのは一体何年ぶりだろう。





見上げれば空はある程度暗くなっていて、もうすぐ始まると思うと自然と鼓動が速くなる。子供みたいに花火を楽しみにしている自分がいた。














「せやAさん、コレ見て！」




侑くんが私に差し出してきたのはこの花火大会のパンフレットで、右下にある大きなハート型の花火を指さして言った。









「この大きいハートを一緒に見たカップルは永久不滅らしいで」



『永久不滅なんて難しい単語よく知ってたね』








そこやないねん！とツッコミを入れる侑くんに流石関西人だなあと感心する。

まあそもそも私達はカップルではないし、私はそんなジンクスを信じるタイプでもない。









「Aさんが信じてなくても俺が勝手に信じとるからええの！」








今日の侑くんはやっぱりいつも以上にご機嫌で、一緒に居る私もつられてずっとご機嫌で。



















数分後





1発目の花火が空高くに上がって、心臓まで響くような大きな音が鼓膜を揺らした。鮮やかな赤と黄色が空を彩った。

















隣ではしゃいでいる侑くんと、一緒にはしゃいでいる私。









今日は来て良かったな


きっと素敵な思い出になるな






そう思った。

episode17→←episode15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す