【宮侑】後輩に恋路を邪魔される【北信介】

episode15 ページ16

「これ不味っっ！」






隣で騒ぐ侑くんは、花火大会で出店していた有名タピオカ店(偽物)でタピオカを買って激しく後悔していた。


上の看板を見れば少しだけ名前を変えて出店している。ズル賢い奴がいるものだ。








ひと口飲んでみてーとタピオカを押し付けてくる侑くんだが、不味いと聞いた後に飲む気は起こらない。


いらない、と押し返す。







「人生経験が大切やで？」






と語る侑くん。老人か。

その後もしつこく押し付けてくるものだから、私が折れて飲むことにした。









『んー…確かに偽物って感じかなあ』








ﾓﾆｭﾓﾆｭとタピオカを口の中で転がしながらコップを侑くんに返せばやけに嬉しそうな顔をしていた。




……今日はずっとご機嫌だなあ。














「フッフ、関節キス大成功や！」






侑くんはパクっとストローを咥えて、満足そうにタピオカを啜った。















『……別に関節キスとか、何でもないし。友達と回し飲みするし、家族とも、兄とでも出来る。侑くんも別にただの後輩だし全然平気』




「人って動揺すると饒舌になるんやで？」









とニヤニヤしながらストローを咥えている。アホなのに饒舌とか難しい言葉使わないでよ。




……図星だったのが尚更悔しい。









平常心貫くって決めてたのに、

どうしても侑くんのペースに持っていかれる。





手強いなあ…
















花火が上がるまで色んな屋台を回った。


りんご飴食べて、わたがし買って半分こして、金魚すくいとか、くじ引きとか。









射的では私の下手さを馬鹿にされまくった。






『…撃ったら反動が来るもん』


「めっちゃ当たり前のこと言うなあ」








貸してみ、と言われるがままに残りの弾全部を任せた。何が欲しい？って聞かれたから私が倒せなかった箱キャラメルを指さす。




すると1発目でまさかのゲット。その後も何個か他のお菓子を落として、大量のお菓子を獲得した。















「彼氏さん射的上手やなあ」





去り際、お店の人に言われた時

隣で楽しそうにしている侑くんを見て、何となく否定する気も起きなくて






『…凄いでしょ、私の後輩』






ってちょっとドヤ顔をカマしてみれば

珍しく侑くんが照れていたから面白かった。













暑いし、人多いし、疲れるけど



やっぱり侑くんと一緒にいるのは楽しいなって、そう実感した。

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