◎ Golden Ocher ページ9
〔 iw 〕
｢……よっ、元気？ちゃんとご飯食べてる？｣
｢それ、俺の台詞な。｣
歌舞伎の稽古やら準備やらで、
Aになかなか会えない生活が続いていた。
少し時間ができたから急遽会うことになって、
今に至る。
｢……おまえ、｣
｢分かってるから、言わないで。｣
こうなるって分かっているのに。
痩せて骨ばった指、こけた頬、シュッとした顎。
今年もまた、こうなる前に会いに来れなくてごめん。
｢やっぱりさ、ひかるがいないと、ダメみたい。｣
｢なに、その言い方。まあ、分かってたけど。｣
｢私はちゃんと食べてるつもりだったの。｣
｢毎年そう言ってるじゃん。つもりじゃダメなんだよ。｣
Aは1人の時間が増えると、
あまり食事を摂らなくなる。
誰よりも自分に無頓着で、周りが優先だから。
俺らの為に頑張ってくれてることは分かってるよ。
だけどもっと、自分を大事にしてほしいんだよ。
｢やっぱり俺が、Aの事管理しないとだめだな。｣
｢そうだよ。管理どころか、そばにいてもらわないと。｣
｢考えてみたら、この時期以上に一緒にいられない時期ないよね。学生時代は、学校でも仕事でも一緒にいたし。｣
｢……うん。だから今、純粋にさみしい。｣
体に影響が出るくらいだから、
心もマイナスに傾いているのは分かってる。
分かっているのに、
ゆらゆら揺れる瞳がやけに儚く見えて、
思わず抱きしめてしまった。
｢さみしいけど、ひかるたちが頑張ってるから、私も頑張るよ。私も、みんなとは別の手段で歌舞伎盛り上げるから。｣
｢……今年で一旦区切りつくから、応援してて。｣
｢言われなくても応援するよ、大丈夫。Snow Manだから、大丈夫。ひかるなら、大丈夫。｣
｢ありがとな。Aはひかるチャージできた？｣
｢うん、もう充電満タンだよ。ありがとう、ひかる。｣
結局最後は俺が励まされて、体が離れる。
まだもう少し、まともに会えない日々は続くけど、
Aの言葉を思い出すと、頑張れそうだよ。
なあ、A？
来年は、この時期も一緒にいられると思うからさ、
2人で花見でも行く？
一緒に美味しいお団子食べてくれるでしょ？
なんて。
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作者名：は む | 作成日時：2023年3月5日 3時
