【YouTuber】貴方の好きなところ【短編集】

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「いないよ」

(嘘っ、やった…！)

見えないように、小さくガッツポーズをする。


「意外ですね〜〜」

「お前、馬鹿にしてるだろ」

「してないです(笑)」

「じゃあなんで笑ってんだよ！！」

馬鹿みたいな会話だけど、こんな事でも嬉しくて。そばにいたいって思ってしまう。

「お前だってどうせ、いないだろ？」

「どうせってなんですかぁ！！」

「図星か」

私を見て意地悪な笑み浮かべる先輩に、グーパンを一発御見舞する。
"いってぇ"なんて言いながらも、笑いを堪えきれず吹き出す先輩。

「笑ないでよ。それに…」

「ん？」

「彼氏は先輩がいいです」

思い切った告白。
恥ずかしくて顔が上げられない。
返事はまだ、返ってこない。
先輩、今はどんな顔してるのかな。

驚いてる？困ってる？

それとも…


「嫌だよ、お前みたいな彼女」

返ってきたのは、乾いた笑い声。
淡い期待は空の向こうへ飛んでいった。

「酷いです…」

「すまん」

そうやって、ちゃんと謝ってくれるところとか、全部、

「嫌い」


「…先輩なんか大っ嫌いだ！」

(こんな人、なんで好きになっちゃったかな…本当…)

「じゃあね！先輩」

先輩の隣で歩いていた速度を速める。
段々と加速していって、
最後はほぼ、全力疾走に近かった。

背中に"おい！"って、先輩の声が聞こえたけど、無視した。

(あ〜〜〜私の馬鹿)

こんなにも好きなのに。
日本語って難しい。
たった二文字の"すき"が伝わらない。



(なんで上手く伝わらないの！！)
(なんで上手く伝わらねぇんだよ！！)

サイテイ《そらちぃ》→←嫌よ嫌よも好きのうち《シルク》

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