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夥い量の血液、それちフェリドだった灰。レイピアにベットリとついた血脂を、クララは静かに払った。そしてその真っ赤な瞳が三人へ向けられる。

「死んだの、、、?」
「ええ。」


悠仁のその問いにクララは静かに答えた。どうやら気配的にこの現世にはいないようだと悟る。そして周りに転がっている人間の死体をざっと確認すると、立ちすくんでいた三人に視線を向けた。




「さあ、後処理はいいからもう帰りなさい。」
「、、、どう、責任をとるつもりですか。」


恵はその年よりも幾らか老獪な面持ちでクララを見つめる。


確かにフェリドはクララと同じ吸血鬼で、同族。そしてその彼はかなりの死傷者を出した後そのまま死んだ。咎が及ぶとすれば監督不行届でクララにも責任はあるだろう。


「どうにでもなるわよ?」


それに対するクララの返答は三人が拍子抜けしてしまうような内容だった。


「そもそもフェリドの存在は上に報告されていないの。あの場で、フェリドを確認したのは限られた人間だけであってその顔も名前も掌握済み。そしてそのフェリドはもう死んでいない。」
「つまりいなかったことに?」
「ええ、呪霊の仕業にでもなるんじゃない?」


報告書などいくらでも改竄できる。そしてこの規模の被害など特級術師であるクララからしたらざらにあるのだ。例え、上層部がフェリドのことを知っていたとしてもその報告書に不可解な点などあるはずもない。



その説明に、感情が爆発したは野薔薇だった。顔を真っ赤にさせて、いつぞやのようにクララの胸ぐらを掴みにかかる。


そして、クララも前回同様抵抗することはなかった。


「アンタ、少しは申し訳ないとは思わないの!?」
「思わないわよ。貴方は同じ人間が犯した罪を、同じ種族だからと後悔して罪悪感を持つのかしら?」


それとは別に、そもそも吸血鬼には心がないのだから罪悪感など持つはずもない。そして、クララからすれば人間はどう足掻いても所詮は家畜だ。


そう口にはしなかったが、野薔薇とクララのあまりの温度差に、野薔薇の目には涙が浮かぶ。


クララが吸血鬼だとは知っていても本質的に理解していない彼女にとって、あまりにも激しすぎる温度差と凄惨な現場によるストレスで精神状態は最悪だった。


また面倒な状況になったものだとクララは遠い目になった。

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Reina(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!私生活の方が忙しくて中々時間が取れなかったのですが、そう言っていただけるととても嬉しいです。頑張ります! (2021年10月24日 19時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新お久しぶりです!もう更新しないのかなぁと少し不安になってましたがありがとうございます!ほんとにこの小説面白くて大好きです!無理だけはせずにこれからも頑張って下さい! (2021年10月24日 3時) (レス) @page26 id: 9bb0d4787d (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - いつも楽しく拝見させていただいております。更新を楽しみにしてお待ちしております!頑張ってください! (2021年7月18日 17時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
Reina(プロフ) - れんさん» ありがとうございます (2021年5月25日 16時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ご対応頂きありがとうございます!これからも更新楽しみにしております。季節の変わり目ですのでお身体にはご自愛くださいませ。 (2021年5月25日 1時) (レス) id: cf8acd5d9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Reina | 作成日時:2021年2月11日 2時

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