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隣から漂ってくるコーヒーのいい香り
ケースからはみ出た色鉛筆
わんわんと元気よく吠えて戯れる犬っころたちの声を聞きながら、私は裏方でハサミを握っていた
赤 黄緑 薄紫 オレンジ
たくさんの色の紙が散らばってデスクにお花畑を作る
在籍する犬と猫たちの紹介コーナーや動物豆知識が書かれたポスター
前回作って表に貼り出してから随分と時間が経ったということで、一新しようと絶賛制作中だ
少しでも可愛く見えるように、写真に加えて色画用紙やシールでデコレーションして工夫する
手描きのイラストなんかもいれて
『A先輩〜。その焦げ茶のウニみたいな形のやつに点々3つついてるの、なんの絵ですか？』
「何って、ホーリーだよ？」
『ほっ………………ほ？』
「ホーリーだよ」
このホーリーは中でも1番よく描けたんだ
あまりの絵の上手さに驚いたのか、笑顔のままなぜかフリーズしている後輩ちゃんにドヤ顔してやる
そんな顔されたら、照れちまうよ
「あちゃー色画用紙足りなくなっちゃったや。ちょっと買ってくる！」
立ち上がり、エプロンを外して財布を手にした
本屋さんまで半分くらいまで来たところで、ふと何かをキャッチする
ピピ
ピピピピ
ピピピピピピピピピピピピピピ
まっすぐ前に歩く度に連れてうるさくなっていく頭の中の電子音
その音の激しさが徐々に増していくと、脳内の司令塔が甲高い声で喋り出した
“ ターゲットニ、セッキンチュウ！！！
ターゲットニ、セッキンチュウ！！！
モチモチレーダー、サドウシマシタ！！ ”
私のアンテナが反応して確信する
このアンテナが動く時は
「いるぞ！これは確実にいる！近くにいる！近づいてる！」
みるみる上がっていく口角
本当は全力疾走したい気持ちを抑えながら早足で進む
手に拳を握って前後に大きく振って
競歩大会に出れば、おそらく優勝候補になれるであろう勢いである
角を曲がるとレーダーの発信源に到着
ほら！やっぱり、やっぱりだ！！
私にとっての癒し、愛でたい男ナンバーワンの――――
「ジジミンちゅあん！！！！！」
背後から近づき声を挙げる
予想外に大きい声が出た上に噛んでしまった、なんて恥ずかしい
『うわっ！！！って、あれぇAヌナ？どうしたのこんなところで。走ってきたの？顔真っ赤だしすごい鼻の穴膨らんでるよ、へんなかお。ふふ』
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作者名：綻
| 作者ホームページ：https://twitter.com/_hokorochan_
作成日時：2022年11月27日 21時
