【派生作品】主観的幸福 (ページ8)

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第4話優しい聖職者様ページ8

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家を後にし、教会へ入る。
中は青を主にしたステンドグラスに、光の神バルドルと闇の神エキドゥナの戦いが描かれている。
外からの光がステンドグラスを通しているからか、青白い光となっている。
ずっと前から建てられているため、柱等に使われている木の劣化が多少見える。

「個室はこちらです。扉は我々の仲間が塞いでくれているので、誰かが間違えて入ってくることはございません。ご安心ください。」

「はい、お気遣いありがとうございます。では失礼します。」

個室の中はシンプルで、木の手触りが暖かい。
ホコリっぽく感じないのは、お掃除をしっかりしているからだろうな。

「それでは聖痕を確認させていただきます。お見せしていただいても？」

「はい...。」

羞恥心と戦いつつ、ズボンを膝まで下ろす。
場所が場所なら変質者だよなぁ...。

「...ええ、確かに聖痕です。すみませんが布で拭いてもよろしいでしょうか？一応描かれたものではないか確認をしたいので。」

「わ、分かりました。」

聖痕の上を濡れた布で拭かれる。
一向に落ちない聖痕を見て、聖職者様も安心なされたようだ。

「本物の聖痕です。念の為とは言えお手数をおかけして、申し訳ございません。」

「いえ、間違いが起こってはどうしようもありませんからね。では私は家に戻ってもよろしいのでしょうか。」

そう言うと彼は微笑んだ。

「ええ、旅は長くなります。家族と会える時間は当分来ないかもしれません。今日だけはお楽しみください。あと...。」

手持ち無沙汰な僕の手を取られる。
そして彼は真剣な目で僕を見つめた。

「私も明日、エーデルシュタインへお供させていただきます。着いた後は数日滞在し、神子様が揃うのを待ちます。滞在期間中も私はリアム様の傍にいますので、何かございましたらお声かけください。もちろん相談や普通の話し相手としてもお呼びください。」

「あ、ありがとうございます。嬉しいです。旅や使命など、少し、怖かったので。聖職者様がお優しい方で良かった。」

彼が優しく微笑む。僕を安心させるためだろう。

「私の名前はエリオット。エリオットとお呼びください。では家まで送りましょう。」

「ありがとうございます、エリオット様。」

エリオット様に家まで送っていただいた時には、もうお昼が少し過ぎていた。