35*遠ざかる気配 ページ35
「赤坂はあんまり家のことを話さないタイプだけども・・・前に一回、妹ちゃんと話した時に家族と仲が悪いことを言っていた。しかも酷い暴力を受けていた」
「それって」
「今妹ちゃんと電話して分かった。2人とも、両親の元にいる」
おそらく無理矢理切られた電話は、両親が通報されるのを分かってだろう。
警察には捜索依頼をしているので、私たちはそれを待つばかりだ。
赤坂の書類には連れ戻されるのを分かっていてか、実家の住所の記入はなかった。
警察がきっと探してくれると信じて、私たちは仕事に戻った。
しかし更に3日経っても、一向に行方は分からないままだった。
「どうして。そんな遠くにいるの？」
「・・・」
あの夜、最後に会ったのは私だ。
もし私が引き止めれば、こんな状況になっていないのだろうか。
どうして、彼のことをもっと気遣ってあげられなかったのだろう。
「二人とも、顔色が悪いよ」
「部長も、良くないですよ」
「・・・寝れてなくてさ。何となく彼には好かれてない気がするけど、大事な社員だからさ。君たちや水島と塩沢は特に顔色が良くない。今日はもう帰っていいよ。社長には連絡済みだ」
「え」
「そんな状況で仕事は出来ないしな。そして元気になって赤坂君も戻ってきたら佐倉ちゃん、デートしよう」
「はーい部長ー赤坂君に好かれてない理由それでーす。セクハラになりますよ」
「・・・冗談さ」
こうして私たちは早めの退社となった。
普段は鬱陶しいほどに絡む部長も、こういう時ばかりは頼りあってしっかりしている。
部長も大分顔色悪いのだが、大丈夫なんだろうか。
「・・・赤坂の自宅、行ってみる」
「私も行くよ」
*
チャイムを鳴らしてみたが、やはり誰もいる気配はなかった。
しんと静まったドアの先を見つめていた。
6日前までは彼はここにいたんだ。
本当に必要最低限の家具と物しか置かれてない、片付けられすぎた部屋。
「・・・」
気づいたら私はドアの前で泣いていた。
ドアの先を見て泣いたって、彼が戻ってくるなんて思ってないのに。
重いながらも告白を辞めなかったあの後輩の声が、今とても聞きたくなって仕方ない。
どこにいるのよ。
私の心にぽっかりと穴を開けたのは紛れもない貴方なのよ。
急にいなくならないで。
この心の隙間を、埋めてよ。
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ルリアイス(プロフ) - 夢魔さん» ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2020年1月11日 0時) (
レス) id: 0fcb288ad8 (このIDを非表示/違反報告)
夢魔 - 凄く面白かったです！ これからも応援してます！！ (2020年1月10日 23時) (レス) id: f6b046dcfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ☆アイス | 作成日時：2019年10月28日 22時
