32*君を助けたい ページ32
山田先輩と協力しながら仕事を終え、今日も定時で帰れる。
佐倉先輩に帰る約束しようと、俺は先輩の元に駆け寄った。
「先輩、帰りましょ〜」
「あ、赤坂。お疲れ様。ごゆっくり〜」
「流石塩沢気が利く」
もう塩沢にもバレてしまったため、無理に隠す必要がなくなった。
塩沢はさっさとその場を離れて、水島と帰宅した。
「ごめん、気分じゃないわ。一人で帰らせて」
「・・・何があったんですか。何でそんなに辛そうな顔をするんですか」
気分じゃないと言う先輩の顔はどこか辛そうだった。
体調が悪いといった辛さじゃなくて、精神的に辛そうな感じに見えた。
「放っておいて。私は、」
「何か、言われたんですか」
「は?」
「先輩の事、酷い目で見てくる人たちがいたんで。それが原因なんですか」
「・・・何でそこまで見てるのよ」
力なく静かに笑う先輩が徐々に俯いた。
いつも綺麗な背中を丸め、肩の揺れが少しずつ大きくなっていた。
先輩をずっと見てきたから分かる。
先輩のことを悪く言ってくる人たちがいるのを、俺は知ってしまった。
先輩が呼び出されていたのに気づいたのは、周りが噂をしていたからだけども。
俺がもっと早くに助けにいければ。
「先輩が好きだからです」
「・・・それよ。貴方がそうやって言ってくるから。だから・・・」
先輩の綺麗な目から、静かに涙がこぼれていく。
一瞬綺麗だと思ってしまったが、慌ててハンカチを用意して涙を拭いた。
こんなにも弱った先輩を見るのは初めてだった。
「私は貴方と同じ分だけの愛を返すことが出来ないのに。なのに貴方は飽きずにずっと告白ばっかりして。そんな振り向きもしない女を追いかけて、何が楽しいのよ」
「先輩が好きだからですよ。好きじゃなかったら追いかけもしないし、ずっと思い続けることもできません」
「全然理由じゃないじゃない」
「愛は重くても、好きになった理由は堅苦しいものじゃないですよ」
きっと俺は先輩が他に好きな人が出来たとしても、ずっと思い続けるんだろう。
それぐらい俺は重くて諦めの悪い男だ。
隣にいるのも、未来を語る相手も、先輩じゃなきゃ俺は嫌だ。
だから俺は、今弱っている先輩を助けたいんだ。
俺は、先輩の支えになりたい。
「どうです?まだ新入社員で給料は少ないですが、将来が期待される男ですよ?いっそ付き合ってしまうのもありですよ」
「・・・あんたはホントにもう」
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ルリアイス(プロフ) - 夢魔さん» ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年1月11日 0時) (レス) id: 0fcb288ad8 (このIDを非表示/違反報告)
夢魔 - 凄く面白かったです! これからも応援してます!! (2020年1月10日 23時) (レス) id: f6b046dcfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルリ☆アイス | 作成日時:2019年10月28日 22時