胃薬が二十七錠 ページ36
「Aさん…出て来てください」
『いやです』
本日六十七回目のやり取りである。
布団に包まったまま一向に出て来ようとしないAと、そんなAを心配するしのぶ。
急に蝶屋敷に来たと思えば、病室の寝台に入ったまま動かなくなってしまったのである。
…布団の下の方から、何か動物の尾の様なものが出ているのにはあえて触れないでおこう。
『今の私の姿は誰にも見せたくありません。…急に来て勝手に借りたのは悪いと思っていますし、反省も後悔もしてきます。ですが、それ以上に今の格好は見せたくないです』
「困りましたね…」
うーん、と腕を組み考える仕草を見せる。
『…本当に申し訳ないです…でも、罪悪感とかよりも今は羞恥心が勝って_____』
「…えいっ!」
布団を握る力が弱まった瞬間を見計らい、しのぶは一気に布団を引き剥がした。
「もう…何をそんなに恥ずかしがっ…て…いるのです、か………えっ」
『だ、だだだだから見せたくないって…!しのぶさん酷いです…!』
「……??」
やや処理落ちを起こしかけているしのぶの脳内。
いつもは冷静な蟲柱、今までにない程のパニック状態である。
『っ…ぅぅ…』
必死に猫の耳を押さえつけて隠す姿は、産屋敷の一言の様な凄まじい衝撃を与えた。
「…何て可愛らしい姿をしてるんですかAさん!」
『ひぇっ』
猫を撫でる要領で頭を撫でくりまわし、顎の下の辺りを撫でる。
ごろごろ、と本物の猫の様な声を出すAの破壊力はどんな鬼の攻撃よりも強かった。
『はにゃぁ〜…ごろごろ…』
「…………………はぁぁぁあ………」
馬鹿でかいため息を零し、更に撫で続ける。
「(この姿をあの変態達に見せたらAがどうなる事か…治るまではここに隠しておかないといけませんね)」
あの冷静なしのぶでさえも心を乱しかけたのだ。
変態集団に見つかったらAが何をされるか。
考えたくもない事である。
「Aさん、とりあえず今日一日は蝶屋敷にいてくださいね」
『はい…』
と、Aが返事をした矢先だ。
「胡蝶はいるか!すまないが怪我を見て貰いたい!」
『(れ、煉獄さん…?!)』
「Aさん、布団をかぶっててください。すぐに済ませますので」
こくこくと頷き、Aが素早く布団に戻ったのを見計らって扉を開けた。
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ぷりっつ - 夢主ちゃんのスカートが膝より高い. ..ゲスメガネ呼んでこよう...チャキッ← (2021年5月9日 2時) (レス) id: 8a7ce8997d (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - 絵に一目惚れしました……!!面白い!すごい!!! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
ガコ - この小説、すごく面白いですね! あと、33の時、すごくカゲロウテイズっていう歌に似ていますね! (2019年11月25日 0時) (レス) id: 8244513a71 (このIDを非表示/違反報告)
もやし好きのもやし(プロフ) - コメントありがとうございます!素晴らしい作品だなんて勿体無いお言葉です…!続編もよろしくお願いいたします!! (2019年10月5日 8時) (レス) id: 6a4e808260 (このIDを非表示/違反報告)
緩莓 - 本当に最高です!!!こんなに素晴らしい作品に出会えて光栄です(´;ω;`)更新お疲れ様です!続編も読みます!これからも頑張ってくださいね! (2019年10月5日 7時) (レス) id: 6806c82317 (このIDを非表示/違反報告)
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