胃薬が十錠 ページ14
あれから直ぐに童磨の手によって視界を覆われ、移動する事約10分程。
走っていると思わしき振動が止み、目的地に到着したのだとAは悟った。
『あの…?これ、とってくださ…』
「だぁめ。もう少し待ってね?」
『…?』
再び童磨が歩き出すが、足音と互いの呼吸音しか聞こえない。
ほぼ無音状態の空間に恐怖を感じたAだったが、ぐっと涙を堪えた。
『…っ、ぅ…』
「(うわぁ、泣いてる…可愛いなぁ喰べちゃいたいなぁ)」
ぷるぷると小さく震え、下唇を噛み締める様子に再び口角が上がる。
「もうすぐ着くからね。安心していいよ。俺がいるからね」
優しく頭を撫でると、Aが小さく頷いた。
「(なんて無知で馬鹿で純粋なんだろう…自分が嫌っている鬼にすら安堵を求めるなんて、最低で最悪な事なのにね)」
クク、と低く喉を鳴らして笑みをこぼす。
不気味な程優しい手つきで頭を撫で、長い廊下を歩く。
『っ…しのぶさん…無一郎兄様…みんな、たすけて…っ怖い…』
小さく漏れ出た言葉を、童磨は聞き逃さなかった。
''みんな''とは恐らくあの鬼狩り達の事だと、即座に理解した。
「…何で俺と居る時に他の…しかも敵対してる奴らの名前を出すかなぁ…」
不愉快だ、と何度も呟き空いている自身の左手を握り締める。
長い爪が皮膚を突き破り、ぷつ、と音を立てた直後に血がにじみ出る。
『なにこの匂い…?』
血の匂いを察知し、更に顔を青くする。
だが、童磨は自身の左手から滴る血液を見てにやりと笑った。
「…あぁそうだ。ここで君を鬼にしてしまえばいいんだ!そうした方がきっとあの方も喜ぶに決まってるよね!」
『…っ、はなして!やだッ!!いやだ!!』
「おっと」
突然、Aが暴れ出し童磨の腕から転げ落ちるようにして逃れる。
目を覆っていた布を力任せに外し、覚束ない足取りで奥へと進んで行く。
少しの間目を丸くしてその様子を眺めていたが、直ぐに我に返りコキ、と首を鳴らした。
「あぁ、これはいけない。半殺しにして脚を斬ってあげないと」
激痛と恐怖で泣き叫ぶAの姿を想像し、熱の篭った吐息を吐き出す。
「ぁは…今行くから待っててねー…」
狂気に満ちた瞳を爛々と輝かせ、通路の奥へと足を進めた。
余談ですが、童磨さん狂ってれば狂ってるほどどストライクです…
多分この物語の中では童磨さんが一番狂ってますね()
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ぷりっつ - 夢主ちゃんのスカートが膝より高い. ..ゲスメガネ呼んでこよう...チャキッ← (2021年5月9日 2時) (レス) id: 8a7ce8997d (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - 絵に一目惚れしました……!!面白い!すごい!!! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
ガコ - この小説、すごく面白いですね! あと、33の時、すごくカゲロウテイズっていう歌に似ていますね! (2019年11月25日 0時) (レス) id: 8244513a71 (このIDを非表示/違反報告)
もやし好きのもやし(プロフ) - コメントありがとうございます!素晴らしい作品だなんて勿体無いお言葉です…!続編もよろしくお願いいたします!! (2019年10月5日 8時) (レス) id: 6a4e808260 (このIDを非表示/違反報告)
緩莓 - 本当に最高です!!!こんなに素晴らしい作品に出会えて光栄です(´;ω;`)更新お疲れ様です!続編も読みます!これからも頑張ってくださいね! (2019年10月5日 7時) (レス) id: 6806c82317 (このIDを非表示/違反報告)
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