転校先に婚約者がいるんだが【 桃 】

橘と名字 ページ3

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「名字を…変える？」


「そう、橘から「宮」に」


お父さんに呼ばれたので、リビングへ行くとこんな話だった。


「うわべだけでだけどな」


「…へえ、名前は？」


「それは大丈夫だ」


と一蹴された。


悔しい。








「宮 A、宮 A…」


慣れない響きだ。


「引っ越すのは…


明後日？」


それまでに「宮 A」という別の私を作りあげなければいけない。


無理難題を突然つきつけられたような気分である。


なんとなくスマートフォンで「キャラ作りのしかた」

と検索してみた。


【新学期でキャラを変えたいあなたに！】


【転校したときの第一印象を良くするための方法！】


などとずらーっと同じような題が並ぶ。


「…やめよ」


自分自身で、キャラをつくってしまおう。


「宮 Aです！


宮 Aです…っ


宮 Aだけど？


宮 Aだよ〜っ！


…なにしてんだ私」


鏡の前で恥ずかしい…。


自分でも頭を抱えた。


するとカチャリと音がした。


「姉さん何してんの…」


「えっ？ああ、いやその…」


弟である 伶(れい) がこちらを見て不安そうにしていた。


「えっとね、違うの違うの

お姉ちゃんちょっと…あの、」


「姉さん…良いんだよ、誰しもそういうことは」


「だから違うの！！！」


変な理由を弟に植え付けられそうになった。


「というか何しに来たの？」


「あ、中三のドリル貸してほしくて」


「良いけど」


伶は受験生なので勉強で大忙しなのだ。


頭が良いんだから大丈夫だろうけど。


「姉さんと一緒のとこ行きたいし」


「伶なら行けるでしょ」


健気な弟………


「あと何ヵ月？いち、にぃ…


五ヶ月かな？頑張ってね」


そう言って弟を追い出した。


…いや、かえっていただいた…？




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