転校先に婚約者がいるんだが【 桃 】

橘と転校 ページ2

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いつもどおりに家から帰ると、


お母さんが悲しそうな顔をしていた。


「…お母さん？」


「あ、A…」


私に気づくと、改まったようにこちらに向く。


「ちょっと、話がしたいのだけれど…」


「え、良いけど…？」


リビングの椅子に座るよう促されたので大人しく座る。








「あのね、いろいろあって…


転校することになったのよ」


「…え」


そこそこ学校は楽しく、明日も学校に行けるものだと思っていたのだけれど。


「(…まあ、そういうこともあるか)」


「ごめんなさいね…」


「いや、お母さんのせいじゃないから


大丈夫だよ」


そう言ってリビングをあとにした。








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「…転校か」


その言葉を口にしてみても、なかなか実感が湧かない。


…そうだ、電話しよう。




『…もしも〜し』


「あ、薫？」


『うんうん、どうしたの？』


薫は私の同級生で、まあ言わば親友といったところか。


「ごめんね、色々あって


転校することになっちゃって」


『…え、うそ』


「嘘じゃないんだよね…」


『そっか〜、すごい寂しい…』


「それは私もだよ」


『ま、でもL.INEとかで繋がれるから良いけど…


あ、あいつには電話しなくてもいいの？』


「あいつって…良いよ別に」


『えぇ〜？だって転校したとこにいるかもよ〜っ！』


と悪戯っぽく薫は笑う。


「いや、ないって」


と私は笑った。




…なんて今となっては笑えない。




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