ちょっとリアルなトリップモブ3

デジャブ・・・からの16 ページ16

人間命が危なくなると、すべての動きがゆっくり見えるスローモーションや走馬灯を見るとか言うけれど、Aには一切そんなものは見えなかった。
拳が振り下ろされた瞬間、咄嗟に目を背け拘束されていない手で自分の頭をかばい、これから襲う痛みに耐えるため歯を食いしばる。

「っっ！！《バキッ！！》うぉぅ！・・・は？」

何が起きたのだろう？
とりあえず男に捕まれていた手が離れた反動で尻もちをついたお尻が痛い。
そして、今わかるのは目の前に少し汚れた服を着た息を切らした金髪の男が背を向けて立っていると言う事と殴られる心配がなくなったと言う事。
ちなみにAの腕を掴んでいた男は数メートル先で吹っ飛ばされていた。
完全に状況を理解できないAは何がどうしてこうなったのかを誰か詳しく説明願いたい。切実に。
一番手っ取り早く知るには目の前にいる人に聞けばわかるのだろうが、なにぶん息を切らせすぎて話しを聞ける状況ではない。
とりあえず立ち上がり息が整うまで背中を擦る。

「あの・・・大丈夫ですか？安室さん」

映画でも漫画でも現実でも長距離マラソンをしたように息を切らせている安室を見るのは初めてだ。
本当はお水なり用意をしてあげた方が良いのだろうが、あいにくカバンに入ってないし、近くに自販機もない。
背中を擦ることしかできないのだ。
少しして息を整えた安室が「大丈夫です。ありがとうございます」と顔を上げたところで

「安室さん！！」

とスケボーでコナン君登場。――うん。遅くね？
そしてその後ろからバタバタと何人か人が走ってくる音が聞こえてきた。

「Aさん！大丈夫ですか！！」

やってきたのは2人の男。高木刑事と初めましての千葉刑事だ。
安室と同じく息を切らしてきた2人だが、安室程ひどくはない。だってまだ話すことができるのだから。
やってきた高木刑事と千葉刑事が男を拘束しつつ、ここまでの経緯を簡単にAに説明してくれた。

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