ちょっとリアルなトリップモブ

マジか9 ページ10

程なくして人の良さげなおじ様が来店された。
何気なしに見ていたら、梓が『マスター！』と呼んだので、これがマスターか！と慌てて立ち上がる。

「あぁ！君がAさんだね！梓くんから聞いてるよ。ささ、座って座って！」

「よろしくお願いします。」

漫画やアニメでは存在自体はあるものの、一切姿を描かれないキャラだが、私立探偵の安室さんをアルバイトにするあたり、スッゲー人がいいのだろう。
予想通り、明るく人の良いおじ様だった。
履歴書について一言二言話したあと、昨日の梓の件でお礼をされ、このオフィス街でアルバイトの募集をしても、なかなか人が来なくて困っていたそうだ。
この時点でやっぱり安室はまだポアロに居ない事を確信。
希望時間や希望曜日についても、特になく、むしろフルタイムで働きたいと告げればマスターはそれはもう大変喜んでくれた。
よくある小説のようにその場で採用され、明日から働いて欲しいとの事。
基本は私服でエプロンのみ貸し出しだそうで、いつの間にか用意されていたエプロンを梓から受け取る。

「ふふ、改めまして、榎本梓です！明日からよろしくお願いしますね！」

「榎本さんですね。AAです。こちらこそよろしくお願いします。」

「Aさんですね！ふふっ梓でいいですよ」

ここで初めて梓に自己紹介してもらった。心の中では何度も梓さんと呼んでいたのでついついポロっと名前で呼びそうになり、危なかった。
何とかポアロの従業員になれてホッとする。
それに、凄い嬉しそうな梓にここに来て良かったと思う。
梓の笑顔もあるが、本当は・・・

数ある小説や物語の中でもポアロは安全地帯とされている。
それが本当ならポアロにいる間は身の安全が確保されていると思っていいはず。
それに、ここにいれば話には参加出来ずとも近くでコナンや安室さんを見る事が出来る。
この世界で1人になってしまったが、せっかくコナンの世界に来れたのだから少しは楽しもうと、開きなおることにした。

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