29 溢れ出す不安。 ページ30
私が受け入れられたとしても、彼がどう思うかなんて分からない。要らないって言われてしまったら、と思うと妊娠なんてしていない方がいいに決まっている。
命を宿す事は簡単なことでは無いし気軽に考えていいものでは無い。
「……春くん、嫌がるかも。」
ぽつり、と不安を零してしまうと、すぐ傍にいた彼が、鼻で笑った。
真剣に悩んでいるのに、鼻で笑われて腹が立った私がキッと睨んだ。
私と視線が重なった彼が穏やかな声のトーンで私に言葉を返した。
「好きな女とのガキなら、喜ぶんじゃねえの。」
蘭さんの事は、好きじゃない。私と春くんが引っ掻き回されて、掌の上で転がされているから、どちらかと言えば苦手に等しい。
でも、今の彼の言葉で少し救われた私は居た。
もし……本当に妊娠しているなら。私のお腹の中に宿り始めている命を、大切に育てていきたい。
それは私の意見であって、彼の意見ではない。もう、現実から目を背けるのは辞めて、ちゃんと病院に行こう。
「そうだと、いいな。」
蘭さんの言葉に、そう返して。春くんの顔を思い浮かべた。満開の桜のように笑う彼の表情。
……今すぐ、春くんに会いたいな。
スマホが震え、画面を確認すると春くんの名前が表示されている。私は胸を高鳴らせて電話に出ると、想像していたよりも彼の声は低かった。
「ホテルの前にタクシー停めてある。急いで来い。」
「……わかった。今すぐ、行くね。」
電話を切り、鞄に手を伸ばした。財布を出そうとすると、蘭さんの手が鞄に掛かり、覆われてしまう。
「俺が支払うからいいよ。……早く三途のトコ行けよ。」
散々、私達を振り回した人とは思えないくらい優しい対応をしてくれる彼。私はお礼だけ告げて、ホテルを後にする。
春くんの乗っているタクシーを見つけ、傍に寄るとタクシーの扉が開いた。
「春くん、お迎えありがとう。」
私の声なんて聞こえていないような態度で、返事もしてくれない。
何も無かったとはいえ、男の人と2人でホテル内に居るなんて気分は良くないのだろう。
流れる沈黙が気まずい。同じ家に向かうとは思えないくらいの空気の重たさと雰囲気の悪さ。
情緒が安定しないせいなのか、今にも泣き出しそうになってしまう私がいる。
今までだって、喧嘩して気まずくなった事は何度もある。だけど、何故かいつも以上に張り詰めている空気に耐えられなくなりそうで、押し潰されそうになっていた。
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時