獣と薔薇 ページ3
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狼を拾った。
いや、唐突だけども。
日本とは思えない森の中に遊びに行ったら、
倒れていた犬？狼？の様な子がいた。
子、といっても結構デカい。
しばらく様子を見ていたけど、寝ているわけではなさそうで。
息は…している。
取り敢えず、そんなに元気がなければ襲ってこないだろうと、森にテントを張った。
レジャーシートに狼を寝かせ、傷の手当をして。
たまたま持っていた栄養剤を無理やり飲ませた。
暫くすると外からゴソゴソと動く音が聞こえてきた。
見ると起き上がれはしないが、目は覚めたようで。
「大丈夫かな…。森に帰れるといいんだけど。」
そんな事を呟くとふと、目が合った。
じーっと見つめてくるその目は何かを…
訴えかけているような、そんな感じ。
そっと近寄り、毛を撫でながら問いかける。
「どうかした？言葉が話せればいいんだけど…」
すると、辺りが煙に包まれ見えなくなった。
「え、ちょ…何！？」
『…あの、』
ふと見ると先程まで狼がいた所に、人がいた。
同い年位の男の人。とても整った顔つきの。
『助けて、もらって。』
「え…？」
『オオカミ、です。にんげんになれるので…』
成程、この人は先程の狼らしい。
…いや。え、
『びっくりされましたよね…。
でも、ありがとう、ございました。
あの、それでは』
立ち去ろうとするが、まだ傷が癒えていない。
「ちょ、待って！まだダメだよ。
傷が良くなるまでは、動いちゃダメ。
ご飯なら何かあるから、ね？」
『…でも、めいわく、ですよね』
「まさか！全然大丈夫だよ。」
人間の言葉は少し難しいらしい。
つっかえながらも、頑張って話している。
『たすけてもらったから、ちゃんといわなきゃ』
「…？」
『なんで、にんげんになれるのか。』
その子の話によると、
･ここの森にいる動物や植物は何故か人間になれる。
･その森の真ん中に1輪の薔薇が咲いていた。
･その薔薇と狼くんは恋に落ちた。
･ここに来る人間(本物)は水をやってくれた。
･だが、少し前森で火事が起こった。
･人間は動物達を逃がしに来てくれた。
･しかし、薔薇と逃げ遅れた人間が死んでしまった。
･この森のたった1匹の狼くんは途方に暮れ
ご飯も食べずに倒れた所を、イノシシに襲われた。
･通りかかった俺の気配で何とか助かった。
凄く残酷な話だった。
そんな事がありながらも懸命に生きている彼が
とても愛おしくて…。
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作者名：アイスティー | 作成日時：2019年12月29日 16時
