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「ね、オレと行こうよ。痛みも苦しみもない、楽しいところだよ？」
逃げなくてはならない。角名くんの、ガムシロップよりも甘い死の誘惑から。
魂の半分はくれてやる。
理性がどろどろに溶けて原型を留めなくなる前に、私がすべきことはもう決まっている。
震える左手を、口元に運ぶ。細く息を吐き切ると、私は思いっきり指に歯を立てた。
鋭い痛みがびりりと走って、口の中に鉄の味が広がるとともに、思考回路が少しではあるものの明瞭になる。
(角名くん、私はまだ……そっち側にはいかないよ)
渾身の力で腕を振り切って、私は回れ右をすると夜の中を逃げ出した。
後ろを振りかえってはいけない。黄泉の国から帰るときはそうしなくてはならないよ、と誰かが言っていたっけ。
走って走って走って。喉がカラカラに乾いても、太ももが悲鳴を上げても、私はスピードを緩めることなく疾走し続けた。
遠くで祭囃子が響いている。
家に辿り着くと、私はベッドに潜り込んで布団を頭からかぶった。必死にまぶたを閉じる。歯の根が当たってカチカチと音を立てる。
身体は覚えていた。
私の魂の“夜”の部分を殺されたことを。
それから泥のように眠った。今宵の出来事が全て、夢であればいいと思ったから。けれどまた目覚めた時、左の人差し指の噛み傷と、右腕にくっきりと掴まれた指の痕が残っていて。ぽっかりと空いた胸の中の穴が魂の死を現実に引き戻した。
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［ハコナカ］(IN THE BOX)(プロフ) - おこわさん» 雰囲気を楽しんでいただけたようで何よりです！ありがとうございました〜！ (2020年6月1日 12時) (
レス) id: 4fd7cad6f6 (このIDを非表示/違反報告)
［ハコナカ］(IN THE BOX)(プロフ) - ひーとさん» 虜囚とこの話は繋がってるので要素入ってます！楽しんでいただけて幸いです(*≧∀≦*) (2020年6月1日 12時) (レス) id: 4fd7cad6f6 (このIDを非表示/違反報告)
おこわ(プロフ) - 仄暗い怖さと引き込まれるような文章、とても素敵でした！非常に面白かったです！ (2020年5月31日 21時) (レス) id: f852f9d302 (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 面白かったです虜囚の内容が若干入ってます？今回の作品も最高でした！ (2020年5月31日 20時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：［ハコナカ］(IN THE BOX)
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年5月31日 19時
