第13話 ページ16
福沢はその辺で我に返った。この少年は何者だ?
何となく――厄介事の気配がするが。
「まあ僕には関係ないや。兎に角例の紙くれない?
ああこの中? 面倒臭いなあ。だったら秘書さんの
暇潰しのついでに見つけてよ。僕は別に
この部屋の指紋なんて毛ほども興味ないから」
次々に目まぐるしく、しかも所々意味の
判らないことを云う。
暇潰し? 指紋? かと思うと
いきなり少年は歩き出した。
室内のど真ん中に向かって。
書類の海原に向かって。
少年の踵が一番手前の書類
複数の会社印の押してある
何かの企業間契約書
をまさに踏みつけんとする、その直前
「うわあ! 待って待ちなさい! その契約を
締結するのに何年かかったか
知っているのですか、君は! 」
秘書が少年の肩を掴んでぎりぎり制止した。
少年はキョトンとした顔で秘書を見た。
それから少し考えて、「知らない」と云って
また足を踏み出した。
「うわァーっ! 止めなさい!」
秘書が悲鳴をあげながら書類を掠めとった。
一瞬前まで書類のあった場所に
少年の足の裏が落ちる。
「やればできるじゃない」ニッコリする少年
「君はなんなのですか! 凶事の後であろうと
なかろうとここは社長室、関係者以外の
立ち入りは禁止です!」
「それは知ってる」
少年は何でもない事のように頷いた。
「でも僕、関係者だから。今日面接だって
聞いてきたから。僕見たら判るでしょその位」
――面接?
「は......はぁ、君は面接希望者ですか。
確かに少し前、社長が事務員見習いの面接を
行うと云っていた気がしますが......」
事務員見習い。この破壊的に人の話を
聞かない少年が?
見たら判るでしょ、と少年が云ったが
福沢には全く予想はつけられなかった。
会社と社長に取り付いていた座敷童子か小鬼が
社長が死んだからと取立て要求に
来たのかと思った。
その位少年は場にそぐわなかったのだ。
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読書日和(プロフ) - あい様、教えて下さりありがとうございます( > _ < )修正しておきました (2019年3月9日 7時) (レス) id: 074c26cf03 (このIDを非表示/違反報告)
あい - あの、19話と20話が同じなんですけど。 (2019年3月8日 21時) (レス) id: ba4bf15776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:読書日和 | 作成日時:2019年2月19日 21時