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総統室へ向かう途中、2人の男に出会った。
「エミさん!シャオロン!」
「おや、ゾムさんと……っ、Aさん」
「あれ、ゾムもう手ぇ出したん?早いって。俺も今夜食おうとは思っとったけど」
「出してへんわ。やめろ」
女に慣れていないエーミールは、顔を真っ赤にして倒れてしまった。シャオロンはニヤニヤしながらゾムに絡む。
「えぇ!?お前が?なんで?」
「大事にしたいんや」
「はえー、珍し。A、小さくて弱そうで、可愛いな。……でも、他の男の匂いするんは、腹立つわ」
少し屈んで彼女の首元に顔を近づけたシャオロンはスンスンと匂いを嗅ぐ。トントンの布団で寝ていたからだろう。染み付いたトントンの匂いに顔を顰めると、ニヤッと笑って彼女の白い首筋に歯を突き立てる。
「ぃ゛っ、」
「触んな」
シャオロンの肩を掴んでAから離したゾムは鋭く睨みつける。
「お前だけのものちゃうやろ」
「シャオロンのもんでもない」
そう吐き捨て、スタスタとAを連れて歩き去る。
「助かりました。っふふ、ゾムさんと一緒で良かったです」
「……おん」
Aを総統室に送り届けたゾムは、Aの頭を優しく撫でる。
「いつか、帰ってしまうんやろ?」
「帰れるか、分からないですけどね」
「……帰らんとって」
「え?」
「嘘や、嘘」
苦しそうな笑顔を浮かべたゾムは総統室の扉を開ける。Aとゾムが一緒に居る状況に驚いたグルッペンとトントンはすぐに彼女とゾムを引き剥がした。
「この首の傷……もしかして!」
「ゾム。理性が効かないのは俺らも同じや。耐えろ。一国の隊長を任されているのであれば」
「違いますよ。ゾムさんはずっと助けてくれたんです。今もこうやって、総統室まで送り届けてくれて。本当にありがとうございます」
「A……」
ゾムは自分を庇ってくれたAを見つめたあと、心底嬉しそうに笑う。
「ん、またな!」
ゾムは訓練に戻ってしまった。
「ごめん、俺が目を離したから」
トントンはフワッと彼女を優しく抱きしめる。
「大丈夫ですよ……ゾムさんが居たので」
「ゾム……か。そうか」
「トン氏、不服そうやな」
「別に」
自分だけに信頼を寄せてくれていたはずのAがいとも簡単に他の男に取られたのが悔しくて堪らないのだ。当然グルッペンはそれを見透かしている。その時だった。ぐぅ〜とAの腹が空腹を訴えた。
「っへへ、実は1日ほど何も食べていなくて」
「早く言え!」
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かす(プロフ) - かこつです。楽しませていただきました。ありがとうございます (7月17日 19時) (レス) @page48 id: b1482de086 (このIDを非表示/違反報告)
らあゆ(プロフ) - ありがとう……ありがとう……ほんまにありがとう…一気読み最高でした( ;∀;)夢主可愛すぎるだろ…ありがとう(*´;ェ;`*) (2023年3月21日 8時) (レス) @page47 id: 61afbf51de (このIDを非表示/違反報告)
♪si?do☆(プロフ) - とっても面白かったです!また面白い作品書いてください! (2023年1月6日 16時) (レス) id: 89c26ef77d (このIDを非表示/違反報告)
ヒル(プロフ) - 新しい番外編...?好き。夢主の平和ボケっぽいのがずっと抜けない感じ好き。もう、語彙力喪失。ありがとうございますほんとに番外編感謝します...! (2022年12月21日 23時) (レス) @page43 id: e3196d1b3b (このIDを非表示/違反報告)
小雪 - 完結おめでとうございます!番外編が好きすぎる…。いつも更新されるたびにわくわくして読ませていただいておりました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2022年12月16日 0時) (レス) @page41 id: 472937dc0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月23日 16時