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「えっとじゃあ、つまり、その曼荼羅の書が見つかれば、私は元の世界に戻れるんですね!?」
「まぁ、そういう事です。ちなみに、前の異世界人は5年で帰ったそうです」
「5年……」
「書物は気まぐれだと言ったでしょう。また貴方の前に現れる保証も無い」
「そんな……」
「帰る方法が分かっただけでも万々歳だと思えばいいじゃないですか。最近冷えてきましたし、暖かくしてくださいね」
エーミールはAに歴史書を渡すと仕事に戻った。部屋を出たAは自室の本棚にそれを置くと、総統室に向かった。総統室は本棟。一般兵も沢山いるため危険だが、途中でゾムに会えたため共に向かう。
「グルッペンさん!帰る方法が分かりました!ただ、今すぐに帰れる訳じゃ無さそうです……」
「よし」
「よしじゃないですよ」
ガッツポーズをしたグルッペンに頬を膨らませるA。その時だった。窓の外に雪が見えた。
「雪!」
「さっきから降ってるぞ。だから訓練も早めに切り上げたんやろ?」
「ああ」
グルッペンの問いかけにゾムが答える。窓の外を眺めるAは故郷の雪景色を思い出してキュッと唇を結んだ。
「Aの国にもあったのか?雪」
「ええ。……いいですね、日本と同じのが異世界にもあるって」
「A。お前の母国の景色を絵に書いてくれないか?幹部棟の裏庭をお前専用の庭に作り替えてやる」
「そんなの……悪いですよ」
「気にするな。俺からのプレゼントだと思ってくれればいい」
「……ありがとうございます」
ジーンと胸の奥が温かくなる感覚がした。グルッペンから紙とペンを受け取って、筆を走らせる。
「出来ました!」
そこには典型的な日本庭園が広がっていた。そしてささやかな富士山。桜や松なども植わっている。Aは日本庭園が好きだ。だから幼き頃に訪れた兼六園を思い出して書き、日本ならではの富士山などを付け足した。
「ニホン、だったか?良い文化を持っているな。とても美しい。すぐに制作に移ろう。Aが監督をしてくれ。重責だぞ。しっかり務めるように」
「はい!」
制作は主にトントンの部下が担った。Aが上から見てトントンに通信で指示を送り、トントンが現場に伝えるといったようなもの。1週間で出来上がったそれは、Aの予想を遥かに上回る出来だった。
「わぁ……!毎日ここで過ごせそうです。池も、滝もある……」
「気に入った?」
「はい、とても!ありがとうございます」
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かす(プロフ) - かこつです。楽しませていただきました。ありがとうございます (7月17日 19時) (レス) @page48 id: b1482de086 (このIDを非表示/違反報告)
らあゆ(プロフ) - ありがとう……ありがとう……ほんまにありがとう…一気読み最高でした( ;∀;)夢主可愛すぎるだろ…ありがとう(*´;ェ;`*) (2023年3月21日 8時) (レス) @page47 id: 61afbf51de (このIDを非表示/違反報告)
♪si?do☆(プロフ) - とっても面白かったです!また面白い作品書いてください! (2023年1月6日 16時) (レス) id: 89c26ef77d (このIDを非表示/違反報告)
ヒル(プロフ) - 新しい番外編...?好き。夢主の平和ボケっぽいのがずっと抜けない感じ好き。もう、語彙力喪失。ありがとうございますほんとに番外編感謝します...! (2022年12月21日 23時) (レス) @page43 id: e3196d1b3b (このIDを非表示/違反報告)
小雪 - 完結おめでとうございます!番外編が好きすぎる…。いつも更新されるたびにわくわくして読ませていただいておりました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2022年12月16日 0時) (レス) @page41 id: 472937dc0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月23日 16時