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「お断りさせて貰うわ。大体、本を見ながらやったって、文法も意味もめちゃくちゃになるに決まってるわ。見せてごらんなさい」
Aが座る鬱先生の横から手を伸ばす。真横にある彼女の胸を凝視していると、後頭部を小突かれる。
「痛いぃ」
「痛いわけないでしょう。力入れてないのに。……ほらここ。ガッチガチじゃない」
「なんか卑 猥やね」
「手伝わないわよ」
「ごめんて。でも、Aちゃんええ香りする」
「そうかしら。それより、この文、堅すぎるわ。ここも、同じ『似てる』という単語だけれど、この場合こっちは使わないの」
Aの協力もあって、2時間で作業を終えた鬱先生。彼女に感謝しながら、治療を始める。塗り薬を首に塗って、骨に異常がないか確かめる。
「治療ありがとう、鬱。さて、私の時間を奪ったのだから。何かしてちょうだい」
「俺が初めて奪ったろか?」
「いざと言う時に取っておくわ。……まぁ、今度でいいわ。っ、」
「どうしたの?」
「コンタクトが、」
彼女の発言に鬱先生は驚きのあまり大声を出す。
「Aちゃんコンタクトしとるん!?」
「カラーコンタクトよ。目立つ色だから誤魔化しているの」
カラーコンタクトを取ったAは、素の瞳を鬱先生に向ける。鬱先生は大きく目を見開いて、ゴクッと唾を飲んだ。
向日葵畑のような鮮やかな黄色。彼女の纏う刺々しい雰囲気は取っ払われ、優しい穏やかな可愛い女の子へと変貌した。
「可愛い……!!!」
「あら、ありがとう。じゃあね」
鬱先生の頭を撫でたあと、Aは医務室を出た。コンタクトをつけ直して、いつもの顔にする。
「Aさん」
突然角から現れたチーノ。驚きもせずに澄まし顔で見上げ、見下すAをギュッと抱き締める。
「小さい、可愛い」
「……なんだかもう嫌がるのさえも面倒だわ。ちょうど良かった。歩くの疲れたのよね。ちょっとオスマンの部屋まで運んでくれないかしら」
「俺はお前の犬ちゃうで」
初めてチーノに反抗されたAは、クスッと笑って彼の手を取る。手の甲にキスを落とすと、上目遣いで見上げる。あまりも可愛すぎるその動作に、チーノは狼狽える。その隙を見逃さないAは、チーノを壁に追い詰めて笑ったまま命令する。
「地べたに這いつくばりなさい」
「っ」
簡単に従ってしまう体が憎い。男として生まれた以上、彼女の命令には逆らえないのだ。
「いい顔ね」
チーノの詐欺師としての仮面が落ちた瞬間。則ち敗北である。
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名無していう名前の名無し - しゅ、しゅきれぇしゅ‥‥‥。翻訳 やっばばばばば、ワイのドンピシャキチャーーーーーー神すぎる‼︎‼︎好きです‼︎‼︎。 (8月11日 15時) (レス) @page50 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - スッゴい面白かったし最高でしたぁぁぁ!!!まじで神ですね!!!! (2022年12月10日 13時) (レス) @page48 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!かわいい愛のお話だったなあとしみじみ感じております。ありがとうございます。ひよこの子様の作品の主人公ちゃんってみなさんお可愛いですし生き方に尊敬してます。ありがとうございます。体調にもお気をつけください。好きです。 (2022年9月25日 10時) (レス) id: 0350dafbfb (このIDを非表示/違反報告)
みずき - ん“ん”ん“!!!ック…!どう”どい“!!完結おべでどうございまず!!(泣) (2022年9月25日 2時) (レス) @page45 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - むむさん» 教えてくれてありがとうございます、これから気おつけますm(*_ _)m (2022年9月25日 0時) (レス) id: 07b6abd3f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年9月14日 17時