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しばらくケーキを食べ進めると、硬い何かに当たった。ん?なんだこれ。
「ねぇ、ゾム君。ケーキに何か入ってるんだけど……」
「っははは、出してみ」
何かを企むようなゾム君の顔。恐る恐る周りのケーキを食べながら、ケーキの中に入ってる箱を取り出す。えっ、何?びっくり箱?
警戒しながらゆっくり箱を開けると、銀色に光る指輪が。……嘘。
「A」
優しい声で、私の名前を呼んだ彼は、私の手から指輪を取って、膝をつく。
「A。俺と結婚して欲しい。一生俺のそばに居て、一生Aの飯を食わせて欲しい。俺の、お嫁さんになってくれますか?」
向日葵のように温かい笑顔で、いつも向けてくれる優しい眼差しで。ゾム君はほんのり頬を桃色に染めて言った。
答えは1つに決まってる。涙で視界がぼやける。
「喜んで」
左手の薬指にはめられた指輪からは、ほんのり甘い匂いがした。どうしよう。本当に嬉しい。
出会いはあの日のラーメン屋。怒気を孕んだ声で話しかけられ、食事をする仲に。恋仲に発展してから色々あったけど、無事仲直り。
そしてこんな素敵なプロポーズ。泣くなという方が無理がある。
この人よりも素敵な人は居ない。一生を彼に尽くしたい。彼を死ぬまで愛したい。
「あぁ……緊張した」
「ゾム君。私でいいの……?」
「お前以外居らん。Aが俺の嫁や」
その言葉に嘘は無かった。真っ直ぐと見つめる瞳は、情熱的で優しくて。カッコよくて。好きで好きで仕方が無い。
「A、バリ可愛ええ」
彼以外に、私の旦那さんは務まらない。人生で1番嬉しい日だ。まだ半分以上残っているケーキに手をつけると、胸の奥が熱くなってきた。
「美味しいよぉ……」
ポタポタと涙がケーキに落ちる。ゾム君は、長い指で私の涙を掬って、出会った時とは違う柔らかい声で、笑いながら言った。
「泣きながら飯食うなや」
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ただの一般人。 - 今までにない展開がたくさんあって、とても面白かったです!!好きすぎて、何回も読み返しては感動。を繰り返しています。完結が惜しいですが、幸せになってくれたのでOKです! (11月25日 22時) (レス) @page49 id: adc31b39f1 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ泣いたンゴ…!!天才ですね! (7月25日 15時) (レス) @page31 id: 2a8bacdc50 (このIDを非表示/違反報告)
ねお(プロフ) - とてつもなくしゅき…尊すぎて言葉が出ないンゴォォォ!ところでご報告なのですが、テラーでこの尊い尊い作品に似たものがございまして…。もしかしたらひよこの子様のパクリなのでは?と思いコメントさせて頂きました。ご確認の程よろしくお願いいたします (7月21日 17時) (レス) id: c2f9d03b74 (このIDを非表示/違反報告)
ここなつぁ。 - めっちゃ好きです…!夢主ちゃんと、zmさんの愛らしい恋物語が描かれていて、なんだかほっこりしました、笑。これからも頑張ってください! (2023年4月16日 22時) (レス) @page50 id: d72a0ee724 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆのこ(プロフ) - この作品好きすぎて何度も読み返してます。3は超えました。これからも読み返します。本編のネックレスを探すとこもご飯食べているとこも好きなんですが番外編の子供たちは本当にお気に入りです。子供たちに脅威さんのむっつりなところが遺伝してないことを願ってます。 (2023年1月6日 0時) (レス) @page50 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年9月2日 18時