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「おい、どこ見て歩いてんねん!!!」
グイッと胸元を掴まれる。どうやらやばい人とぶつかってしまったらしい。
「ごめんなさい……、よそ見してて。大丈夫ですか?」
「……ええ面しとるやないかい。俺の女にしたろか?」
私は神に見放されたのかと思うくらい運が無い。こういうことも、今年に入って4回目だ。今度お祓いに行こう。
「ごめんなさい、私付き合ってる人が居て」
「なんやつまらんのう。ええもんつけとるな。これで許したる」
気づいた時には、ネックレスが引きちぎられていて、川に投げ込まれていた。
「っ!!!」
「ええ顔するやん。スッキリしたわ。お前ら、帰るぞ!!」
ギャハハハ、と下品で耳障りな笑い声が背後からする。私は、荷物を置いて、川に入った。
ゾム君が一生懸命作ってくれたネックレス。傷だらけになりながら、疲れた仕事帰りに店に寄って、作ってくれたネックレス。
絶対見つけなくちゃ。今は冬。川の水はとてつもなく冷たく、手が痛くなる。やがて、雨も降ってきた。
雨のせいで水面が揺れ、探しにくくなった。
どこだろう。ゾム君が知ったら悲しむ。
1時間程探しても見つからなくて、涙が出てきた。手の皮がベロベロに向けて、余計痛くなるが、諦めたくない。
「ママ……あの人何してるん?」
「あんま見ない方がいいわよ。そういう病気だから」
そう言われても仕方ないとは思う。大の大人が、雨の日に川でバシャバシャと水の中を探っているのだから。
「……ネックレス……どこ」
涙で前が見えない。絶望的だ。
そんな時だった。愛しい彼の声が聞こえた。
「A!?」
バサッと私に傘をさしてくれた彼は、驚きすぎて声が出ていない。口をパクパクとさせて、冷えた手を暖かい手で包んでくれた。
「何してんねん!!風邪引くで!?」
しかし、ゾム君は、私が泣いていることに気づいて、ソっと抱き締めてくれた。
「ごめん、ゾム君ごめん」
「ゆっくりでええよ。どうしたん」
優しい声に、更に涙が溢れてきた。しゃっくりを上げながら、先程あったことを話すと、ゾム君は舌打ちをした。
怒っている。
「ごめんね。折角作ってくれたのに。私のせいで……ごめんね」
「謝んな。怖かったやろ。Aは悪ないで。大丈夫。また作ったるから」
「あれじゃなきゃダメだよ。……ゾム君が一生懸命作ってくれたんだもん」
「じゃあ、一緒に探そか?」
「寒いからいいよ」
「アカン。2人で探した方が早いやん」
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ただの一般人。 - 今までにない展開がたくさんあって、とても面白かったです!!好きすぎて、何回も読み返しては感動。を繰り返しています。完結が惜しいですが、幸せになってくれたのでOKです! (11月25日 22時) (レス) @page49 id: adc31b39f1 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ泣いたンゴ…!!天才ですね! (7月25日 15時) (レス) @page31 id: 2a8bacdc50 (このIDを非表示/違反報告)
ねお(プロフ) - とてつもなくしゅき…尊すぎて言葉が出ないンゴォォォ!ところでご報告なのですが、テラーでこの尊い尊い作品に似たものがございまして…。もしかしたらひよこの子様のパクリなのでは?と思いコメントさせて頂きました。ご確認の程よろしくお願いいたします (7月21日 17時) (レス) id: c2f9d03b74 (このIDを非表示/違反報告)
ここなつぁ。 - めっちゃ好きです…!夢主ちゃんと、zmさんの愛らしい恋物語が描かれていて、なんだかほっこりしました、笑。これからも頑張ってください! (2023年4月16日 22時) (レス) @page50 id: d72a0ee724 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆのこ(プロフ) - この作品好きすぎて何度も読み返してます。3は超えました。これからも読み返します。本編のネックレスを探すとこもご飯食べているとこも好きなんですが番外編の子供たちは本当にお気に入りです。子供たちに脅威さんのむっつりなところが遺伝してないことを願ってます。 (2023年1月6日 0時) (レス) @page50 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年9月2日 18時