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コネシマさんはバラエティー力にも富んでいて、スタジオを盛り上げていた。コネシマさんの正解している問題は、一般常識から競技クイズに出るようなものまで幅広く、ギャップが凄い。これは人気ナンバーワン俳優だわ。間違いなく。
バラエティー番組が終わって、お風呂に入ろうと思ったら、肩に重みが。ソっと視線を動かすと、コネシマさんが私の肩に頭を乗せて眠っていた。動いて起こすのも悪いし、でもお風呂に入りたい。
「俺のこと、捨てないで」
難しい顔して吐かれた寝言は、あまりにも暗すぎる。コネシマさんの頭を支えながらゆっくり肩を抜いて、コネシマさんの体をソファに倒す。よし、これでお風呂に入れる。
そうコネシマさんに背を向けた瞬間、ガッと力強く私の手首が掴まれた。
「行くな」
必死な顔。今にも大切な物を奪われそうな余裕のない顔。5歳児のまま時が止まったようにさえ思う。でも力は成人男性、いやそれ以上の強い力でギリギリと握られている。
「痛っ」
「っあ、悪い……」
「ここに、居た方がいいですか?」
「いや、いい。もう部屋戻る。着替えは用意してあるから使え」
淡々と言うと、コネシマさんはリビングを去ってしまった。部屋にはテレビの向こうに居るお笑い芸人の笑い声だけが虚しく響いた。
金持ちの風呂は凄いな。設備が整っている。私の家のオンボロ風呂とは大違い。湯船のギリギリまで張ってあるお湯に足をつけ、一気に入る。水かさが増して入り切らない分が外にバシャーっと零れる。
あのコネシマさんの表情、昔の私を見ているようだった。親に捨てられて一人残された時の私に。
お風呂場を出て、脱衣場を見回すとコネシマさんの言っていたものが目に付いた。私の為に用意されていたのは、バスローブ。初めて実物を見た。ふかふかで気持ちいい。
髪を拭いて頭にタオルを巻いて出ると、キッチンで水を飲むコネシマさんに会った。
「お風呂ありがとうございます」
「ああ……ってお前!!!」
「な、なんですか!?」
物凄い形相で近づいて来たコネシマさん。頭に手を伸ばされ、殴られると思って身を縮めればコネシマさんはため息をつく。
「殴らへんから、顔上げろ。俺はお前に酷いことはせえへん。約束する。そんでお前……髪乾かせ」
「家にドライヤー無かったので」
「俺の家にはあるわ!」
「えぇ!?」
「こっちは見た目が仕事やねん。驚くことでも無いやろ。ほら、乾かしたるからここ座れ。突っ立ってんと、おいで」
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まっくろしろすけ - 最初にマグロって出てきて「わ!マグロや!」ってなりました!(なんでマグロでわー!ってなってるのかわかるひとには分かると思う!)この小説好きです! (8月5日 0時) (レス) @page15 id: 017cec3e53 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - あえ?完結しちゃった…。いや、喜ばしいことなんだけども!好きな小説が終わっちゃうと少し寂しいですね…。次回作も期待してます! (7月23日 15時) (レス) @page43 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - ??????????????神かな????????????あ、神だったわ。…周回しよ……。 (5月15日 23時) (レス) id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ168号 - ふふふふふふふふふふふふふふふ嫉妬する夢主ちゃん可愛い(´∀`*)ウフフ動けない…?あっ…(察し)二人共お幸せに〜楽しめよ〜 (4月27日 22時) (レス) @page42 id: bae95beb1a (このIDを非表示/違反報告)
しょしょ - kn夫婦てぇてぇ… あの女子高生分かりみが深すぎるんじゃぁ〜 (2023年4月14日 22時) (レス) @page41 id: 275501d424 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年3月25日 14時