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「たかが一年で俺の改革は遂行不可能やとも知れとったし、俺はあの生徒会長みたくチープな考えは持っとらん」
さらっと一時期の生徒代表をディスるグルッペンは、やはり内申を求めた名誉のための立候補ではなさそうだった。
それなりに成績も、先生からの評価も良くて、同級生にも後輩たちにも好かれていたグルッペン。
「アンタなんでこんな学校来たの？上目指せば行けたでしょ」
「好きな女に気を取られてたら上の学部は落ちたけどな」
冷めかけているアジフライ定食に手をつけ始めたグルッペンは、小盛の炊きご飯を気力の失った瞳で見つめ下ろす。利き手で持つ箸が止まり、数秒経つと意を決して白米を口に運んでいる。
「あ、今月のバスキーロビンズまだ食べてないの忘れてた」
「俺が買うからダブルのどっちか寄越せ」
よく食事中にアイスの話題ができると思う。甘党には胸焼けとかいう概念は存在していないのか、糖尿病で死なないことを願う。
小さな現実逃避から思考が帰ってくると、動揺しか残らない震えた声が口から出ていた。
「好きな女、の、話を私に言うって、それ遠回しに告白でもしてる？」
「地頭の悪い女に興味向いた俺があほらしいわ」
どうやらYesと仮定してもいいらしい。
自虐に陥るほど私がバカだと言いたいのか、この男は。
アジフライのしっぽを入れられた口で、もごもご咀嚼している状態から喉仏が上下する。
「カイザーごときが国家を生成していく時代とでもなりゃ、女でもおらんと血筋が止まってまうやろ」
「カイザーってなに？王様みたいな？」
「近いな、エンペラー…皇帝や」
こいつはやけにドイツ語に詳しい。グルッペンというあだ名も、ドイツ語のとある意味から取ったんだとか本人から聞いた。
「私を一夏の女にでもしてくれるの？」
バカな女のレッテルを否定するためか、相手が食い付きそうな話題を笑って問いかける。迷子になってしまった脳は正直な言葉しか話させてくれなかった。
「一生で百回近く巡る四季の一端を、染めてもらいたいと？」
引き笑いに近いように、くつくつと喉を鳴らすのが薄気味悪い。
土から出た蝉にとっては一週間程度の寿命に過ぎない、人間には特別でもなんでもない、たった三ヶ月の夏。
両想いが恋しかったわけではない。
そりゃ、女友達の中では特段気に入られてた方だとは思うけど、自意識過剰とも知っている。
「俺から告白でもすれば、Aは満足するのか」
疑問詞もないのに返事は、しなくたっていい。
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作者名：ひよこの子
x他8人 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年8月6日 18時
