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パァンと胸部を撃たれる。とてつもない痛みが走った後、衝撃で後ろ体重になってしまった。設備の整った幹部棟とは違い、一般棟は脆い。柵など錆びて意味も無く、Aの体重がかかった瞬間に崩れ落ちる。
それと一緒にAは屋上から落下する。ナースの恍惚に歪んだ顔がくっきりと見える。最後に見る顔があれだなんて嫌だ。しかし、医者だから分かる。助からない。
落ちる時間が酷くゆっくりに思えた。ソっと目を瞑った瞬間、全身に走る衝撃。息が出来なくなり、脳が揺れ、視界が歪む。Aは思い切り地面に叩きつけられたのだ。5階から落ちて全身が複雑骨折。内蔵はきっと酷いことになっているだろう。オマケに銃創が痛んできた。
冬の寒空に放置され続け、Aは必死に呼んだ。小さな小さな声で呼んだ。
「助けて……ゾム……」
虫ほどの小さな声。近くに居ても聞き取れないようなか細い声。しかし、ゾムは異常だった。遠く離れた幹部棟に居ても、Aの声が聞こえたのだ。
「!!」
「どしたん?ゾム」
一緒に居たトントンが聞くと、ゾムは深刻な顔で窓から飛び降りた。
「はぁ!?何してんねん!!!おい、待て!!!!」
3階からの見事な着地。トントンも慌てて後を追う。ゾムは恐るべき野生の勘でAの場所を嗅ぎつけた。
「A……?」
今までに無いほど肝が冷えた。もう既に何十分も立っている。目を瞑ったまま動かないA。
「ぁ、え?なんで……なんで……誰がこんなん」
「退け!!!今すぐ救護班呼べ!ええな!?」
「あ、ああ」
放心状態のゾムに指示を出したトントンは、Aに駆け寄って抱き起こす。しかしすっかり冷たくなってしまった体に嫌な予感しかしない。それでも、トントンはAに自分の服をほとんど着せてAの体を擦って体温を上げさせる。
「A……大丈夫や、大丈夫。絶対助かるからな。生きろ。頼む」
2分も経たずに救護班を呼んできたゾム。事情を聞きつけた幹部達も、Aを取り囲む。Aと付き合いの長い救護班のリーダーがAを診る。
そして、泣き出した。
「……っ!!!!心臓が、止まってます………」
「そ、そんな訳ないやろ!?だって数時間前まで、笑っとった……」
「A……嘘やろ!?なぁ!!!!!!!」
「肺を撃たれ、内蔵に骨が刺さりまくっている。そして全身打撲と骨折。……心停止をっ、確認します」
Aの心臓は完全に停止しており、体温は人とは思えないほど冷たくなっていた。
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けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品もまじで最高でした!!!!他の作品もみるのはもちろんお気に入り登録もしときました!もう最高でした!!もう言葉にならないです!!!!! (2022年12月11日 9時) (レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
一条なつき(プロフ) - めちゃくちゃ良かったですひたすら鼻水ズルズル涙ドバドバで読ませて頂きました!! (2022年10月7日 2時) (レス) @page45 id: 10435debae (このIDを非表示/違反報告)
黒輝 雷音⚡ - 途中emさんが舌打ちしながらカーテン閉めるのでめっちゃ爆笑しちゃいました!(笑)めっちゃ面白い作品でした! (2022年9月26日 2時) (レス) @page45 id: a7e2765b25 (このIDを非表示/違反報告)
這い寄る脅威(プロフ) - ピくんーーーーー!!!www (2022年8月29日 0時) (レス) @page49 id: 0893c6b06a (このIDを非表示/違反報告)
コム@スランプなう(プロフ) - 夢主可愛い…zmさんッ!僕にもその子貸しt)))←おまわりさーんこいつでーす 番外編ちょくちょくかいてくれるの嬉しいです😊 (2022年8月28日 13時) (レス) @page49 id: 0ee0aa5caa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこの子 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年8月1日 20時