36 ページ36
「もう、諦めたよ」
悲しそうに笑うと、Aは礼を言ってグルッペンの部屋を出た。自室まで向かっていると、ショッピとチーノに遭遇する。
「丁度良かった。チーノ君、ショッピ君。私の腕掴んでくれない？」
「はい？」
「なんです、いきなり」
戸惑いながらも、2人はAの腕をソっと掴む。
「うん、大丈夫そうだ。やっぱり幹部はもう平気かな」
「治ったんすか」
「グルちゃんが、手伝ってくれた」
「ああ……そういえば、ゾムさん、処分無しらしいですよ」
ショッピの言葉にAは目を大きく開いて驚く。
「な、なんで」
「さぁ。トントンさんの判断ですし、詳しくは分からないです。じゃあ、おやすみなさい。……部屋まで送りましょうか」
「幹部棟は幹部しかいないし、大丈夫だよ。ありがとう」
ヒラヒラと手を振って、Aは自室に戻った。
それから数日後、フュゼ王国との戦争が始まった。戦力は圧倒的に我々国が有利。だが周辺国の対応によりそれは大きく変動する可能性がある。
ただ、軍で祈ることしか出来ない自分が恨めしかった。
「トントン。追加資料と、D地点からの報告届いたよ」
「ありがとう。……B軍に報告の催促を」
「了解。……死者は」
「見たところ、まだ300っちゅうとこやな」
「……そう」
Aは皆の手伝いに徹した。それしかやることが無い。一般兵とも触れ合う回数が増えて、怖いとかそんなこと言ってられなくなった。気づかないうちに一般兵も克服したのだが、そんなのはどうでもいい。今は皆の帰還を、勝利を待つだけだ。
1週間、2週間と過ぎたところで戦線は大きく変わった。エーミールの作戦が上手くハマって、敵軍を大量殲滅させられたのだとか。だが、死者は増えていく一方。救えた命が、遠くで零れる。それが酷く辛かった。
宣言通り、我々国はフュゼ王国に1ヶ月せず勝利した。
「おかえり。皆、無事で良かった」
大きな怪我もなく戻って来た幹部達。ゾムはAを見るなり抱きついて離れない。
「会いたかった……!!!この1ヶ月A不足で死にそうやったわ」
「Aが居らんからって、敵に八つ当たりしててん」
「ありゃ酷かったわな」
「……Aと一緒に寝る。疲れた」
ゾムは立ち上がるとAを抱えて部屋に戻った。皆を労いつつ、グルッペンはニヤッと笑う。
「A、完全回復したみたいやで。明日から彼女も仕事に復帰する」
「よっしゃ!!!」
皆にとっては、戦勝に次ぐ朗報だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
けんまおし1016(プロフ) - もうこの作品もまじで最高でした!!!!他の作品もみるのはもちろんお気に入り登録もしときました!もう最高でした!!もう言葉にならないです!!!!! (2022年12月11日 9時) (
レス) @page50 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
一条なつき(プロフ) - めちゃくちゃ良かったですひたすら鼻水ズルズル涙ドバドバで読ませて頂きました！！ (2022年10月7日 2時) (レス) @page45 id: 10435debae (このIDを非表示/違反報告)
黒輝 雷音⚡ - 途中emさんが舌打ちしながらカーテン閉めるのでめっちゃ爆笑しちゃいました！(笑)めっちゃ面白い作品でした！ (2022年9月26日 2時) (レス) @page45 id: a7e2765b25 (このIDを非表示/違反報告)
這い寄る脅威(プロフ) - ピくんーーーーー！！！www (2022年8月29日 0時) (レス) @page49 id: 0893c6b06a (このIDを非表示/違反報告)
コム＠スランプなう(プロフ) - 夢主可愛い…zmさんッ！僕にもその子貸しt)))←おまわりさーんこいつでーす 番外編ちょくちょくかいてくれるの嬉しいです😊 (2022年8月28日 13時) (レス) @page49 id: 0ee0aa5caa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年8月1日 20時
