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彼の頑張れ、に頷いてその日は解散。
家に着いてから、さっそくいろいろなことに悩む。
ひとまず青木に来てもらって、浴衣の色から何からを
一緒に決めてもらった。
「当日、髪の毛してくれる…？」
「ふふ、いいですよ」
「よかったぁ、これで一安心」
「それよりも、送り迎えだけで
ほんとに大丈夫ですか？」
「うん。今回は、大丈夫」
こんなふうに準備の目処が立ったのは、
前日のことだった。
夜、そわそわして眠れないなあと思っていると
一件の通知が来る。
光成くんからだった。
“明日だね。もう寝てる？”
“ううん、まだ”
“明日お互いクマできてたらどうしよう(笑)”
他愛のない会話に、ふっと口の端が緩む。
結局、ほとんど寝落ち状態の私は
彼からのお休みを朝に読むことになった。
「はい、できましたよ」
「わぁ…さすが青木！」
「ふふ、ありがとうございます」
待ち合わせの一時間前。
青木の声を合図に鏡を見ると
編み込みを施された浴衣に似合う
アップのヘアアレンジに目を輝かせる。
思わず携帯で写真を撮ってしまうほど
可愛い髪形にしてもらえて気分も上がって。
「浴衣もとってもお似合いです」
「ほんと…？」
「はい。きっと檜山くんも喜んでくれますよ」
「そ、うかな」
彼の名前を出されるとつい、頬に熱がこもる。
喜んでくれるといいな。
そんな淡い期待を抱きながら、車に乗る。
緊張していたせいか、思ったよりも
着くまでの時間が短くて。
着きました、と青木が教えてくれると
ぴん、と背筋が伸びる。
「緊張しすぎですよ？」
「だ、って…」
「大丈夫です。きっと楽しく過ごせますよ」
「う、ん」
「ふふ、いってらっしゃいませ」
優しく背中を押されて、待ち合わせの場所まで。
この前と同じく先に着いていた彼は…。
「っ…」
壁に凭れ掛かる横顔と、紺色の浴衣姿。
声を掛けようとしていたのを止めてしまうほどには
見とれてしまった。
カラン、と音を立てた私の下駄に
彼が顔を上げる。
私だと気づいて、目を細めながら
手を振ってくれる光成くん。
それに対して小さく手を
振り返すのが精いっぱいだった。
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作者名：むう
| 作成日時：2021年2月23日 21時
