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「ねぇ青木。私変じゃない？」
「もう、今日何回目ですか。
全然変じゃないです！可愛いです！」
「う〜ん…」
うっすら車の窓に映る自分とにらめっこ。
青木のやれやれと言った顔が、
ルームミラーに映し出される。
だって、今日は、光成くんのおうちに行くんだもん。
どれだけ準備を万端にしたって、緊張する。
あの夏祭りの日以降、光成くんとは少しずつだけど
連絡する回数を増やしていた。
ミリ単位だったとしても距離が縮まっている気がして
毎日が楽しい。
そんな中、彼が呼んでくれたのだ。
「到着しましたよ」
「っ…はい」
車が止まってぴんと伸びる背筋。
青木が開けてくれた車のドアから
脚を伸ばすのも、少し震える。
差し出された手を何も考えずに取ると
いつもと少し違った。
「えっ」
「いらっしゃい、Aちゃん」
「こ、うせいく…っ」
目の前にいたのは青木じゃなくて光成くん。
ふわっと笑った彼に、じんわりと頬が熱を持つ。
青木はというと、光成くんの斜め後ろ辺りから
私たちを微笑ましそうに見ていた。
「じゃあ、青木、送迎ありがとう」
「いえいえ。また夕方お迎えに来ます」
「あ、青木ありがとう！」
何か意味深に顔を見合わせる二人。
光成くんを見つめてみても
少し俯いているだけで何も分からない。
青木の車を見送ると
彼は私の手を引いて、エスコートした。
何から何まで、スマートだ。
「光成様！！お部屋にお茶の準備が！」
おうちの中に入ると、すぐに駆け寄ってきた
一人の男の人。
茶髪と左に着けられたピン留めが印象的な
少し私より年上に見える人だ。
突然の登場に目を丸くした私を気遣ってか
すっと私の前に腕を伸ばして、
光成くんはその人を制する。
「湧うるさいって(笑)…ごめんね、騒がしい奴で」
「い、いや！あの、湧さんって」
「A様ですよね！お話は聞いてます。
はじめまして。
檜山家にお仕えしている元木湧です！」
彼の制止をかいくぐって前に出てきた湧さんは
にこっと明るい笑顔を見せてくれた。
太陽みたいなその表情にぽーっと目を奪われていると
再び握られた手に、意識が戻る。
ハッとして光成くんを見ると、
なんだか浮かない顔をしていた。
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作者名：むう
| 作成日時：2021年2月23日 21時
