×× -dame・dame- （BEST×BEST）

×× ページ7

××


そうこうしているうちに、いのちゃんの姿は消えていて…。


寂しそうに渡り廊下を眺める俺に、

「また、みんなで、遊ぼうね。」
と、今度は高木が独り言みたいに呟いた。

「あ〜。けど、なんか、いのちゃん。ヒカと喧嘩してるみたいだしなぁ〜。」


俺の言葉に、高木は「あぁ…。」とだけ漏らして、
「そのうち仲直りすると思うよ」って言葉を続けた。


ヒカと薮ちゃんは、いのちゃんと幼馴染で特別なのはわかるけど、
最近、高木まで、なんだか、
「伊野尾君のことならなんでも知ってますぅ。」的な感じで話すのが癪に障る。

また、むぅっと、唇を尖らす俺に、高木もまた微笑んで、

「有岡君も十分、可愛いけどね。」
と、俺の唇を摘んでから、教室を出て行った。


・


二限が始まってからも、さっきのいのちゃんの笑顔が頭を離れてくれない。



俺も、薮ちゃんみたいに、いのちゃんの頭とか撫でたいなぁ。

そんで、いのちゃんが俺に笑いかけて…。

そんで…そんでぇ…。




思わずにやけてしまう顔に気づいて、
気合いを入れるように、顔を手のひらで叩いた。


思い通りにならないことは今に始まった事ではないけれど、
いのちゃんのことだけは、なんとかならないかな…。


幼馴染の薮ちゃんよりもヒカよりも。

俺の方がいのちゃんのことを想ってるって自信あるんだけど…。


いのちゃんの好きな映画だって、好きな食べ物だって、
誕生日だって、なんだって知っているのに。



でも…。

いっぱいいっぱい、知っているけれど、

いのちゃんが本当は何を願っていて、
いのちゃんが誰のことを好きなのかとか、

そういう大事なことは、何一つ知らない…。



けど…。

それでも、高校に入った時から、

いのちゃんのことが好きだから…。



６月２２日。


今日はいのちゃん誕生日。

せめて、『好き。』だってことだけでも伝えないと。



決心したかのように、黒板を睨む。



愛を告白するには絶好の日じゃないか！！
一年に一度の大切な人が生まれた大切な日！！

書いてある漢文はさっぱり読めないけれど、
それすらも俺への応援メッセージに見えてしまう。



放課後決戦だ！！

けど、その前に…。


お腹が空いた！！

チャイムとともに売店へダッシュだ！！


ばーちゃんが言ってた。

” 腹が減っては戦はできない。”って。



その言葉を胸に、

決意を新たに読めない黒板を睨むのであった。




＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「恋」 back number

幼ななじみ　（hk×in×yb）　高校二年生・梅雨→←恋（in×ar）　高校二年生・梅雨

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す