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息を吸う。
Aが少年の疑問の答えを返そうとしなかったのは、自分で疑問を解決すべきだと思ったからだ。
だが、自分のしたこの取り留めのない話が少年の少しの糧になれば良いと、Aはそんな事を真に願える人間だった。
「その為に、世界は広い」
さっと、一つ、強い風が吹く。
小さな空の旅は、そろそろ終わりだ。
「……周りを頼って良いんだ。そう云う時はある。まるきり君に味方がいないか？ そうじゃないだろう」
断定した形で話したのは、繊細な少年が安全だ、と思う程に家は＿＿否、親兄弟に恵まれたと言う事だろう。と判断したためだ。
一人抱え込む様な少年が、少しは泣かなくなる日が来ればいい。周りを見る視野の広さが、それを扶けてくれるだろう。
Aはそう考えて居た。
『イーグル』は静かに、ゆっくりと下降して、赤い屋根に近付いて行く。
「少年、名前は？」
「……ルイス、です」
「そう。良い名だ」
片手で、少年＿＿ルイスの頭を撫で、Aは余裕めかして笑った。
「次は＿＿空から落ちて来るなんてのじゃなくて、ちゃんと笑えて、そんで話をしよう。大丈夫、悩み事も笑い話も、何でも話そう。『宿題』の答えは、『その時』にしようか」
穏やかで、優しい声。耳通りの良い声をしている。
春の風に紛うその声は、全く、いつも通りだった。
.
.
ルイスが家に入るのを見届けてから、Aは見回りのコースに『イーグル』を、ルイスが乗って居た時よりも何倍も速く向かわせる。
(パークスに苦労掛けてるな、……)
Aは非常に申し訳なくなって、
(後で、謝って、礼を言って、何かあれば)
と思った。
そう言う処で、律義な人間なのである。
有事の際に使う無線機は未だ静かだ。連絡も無いので、恐らくは大丈夫だろう。パークスは、クライシスのお気に入りだ。
そうは思っても、Aは『万一』の事を頭の片隅に置いて居た。束の間の平和の中に身を置いて居た処で、平和ボケする程Aは柔い性格ではない。
見廻りのコースを辿りつつ、影を探していると、程無くしてパークスは見つかった。Aを気遣ってゆっくり見回りをしていたのだろうと言う事は、誰にでも容易に想像がついた。
「御免、遅くなって、……異常は？」
「いえ、全く。あの子、大丈夫でした？」
「落ち着かせた」パークスに謝りを入れながら、返す。その先は解らないが、きっと平気だ。
平和な見回りを終えて、城塞に戻る。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
