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だが、ひとらんらんの少なからぬ狼狽を意に介さず、Aは新鮮な土に寝転がり、若い草花の上に寝返りを打った。
そうして、一層濃くなる草花の香りに、擽ったそうに笑みを零した。
「……
聞こえるか聞こえないか位の声が、ひとらんらんの耳に、穏やかな風から届けられる。
ひとらんらんは、少し、息を呑んだ。
あの泣きそうな声を忘れるには、一週間と言う時間は余りにも短かった。
そして、ひとらんらんはその為に、Aを此処に誘ったと言っても良い。
(……あ、そうか)
ひとらんらんは、漸く得心が行った。
ひとらんらんは、Aが空を愛すように、大地を好きだと思って居る。
土の匂いや、其処に生える草花、根付く動物達、それら全てを好きでいる。でなければ、中庭で庭土弄りをしないし、馴染み深いものとは言え馬駆けもしない。
だから。なのだろう。
ひとらんらんが、Aを誘ったのは。
地上の美しさを、ひとらんらんが好きで居るモノを。
其処に目を閉じているようなAに、少しでも見て欲しいと、思った。
ひとらんらんはだから、Aのその呟きが、心から嬉しかった。
「……そうだろ？」
ひとらんらんは薄笑んで言う。
そして、未だ寝転がった儘のAの傍に腰を下ろした。
柔く上目を向くAの、随分と印象の幼い目を見下ろした。
意外だった。
普段のAからすれば、今のこの無垢なまでに幼い目が、一体如何やったら想像できるのだろう。
ひとらんらんはいつからの事か、Aの事を人伝いに、又自ら見知る度、幾度と新鮮な気分を味わっている。
だから、気が付いた。
(……何も知らねえのな、俺)
その『俺』と言うのは、複数形なのか、ひとらんらんが思ったように単数形の人称なのかは、ひとらんらんには判別の術がない。
だが、確実に、ひとらんらんは、浅い交流ながらも酷く近い距離に居た筈で、『仲間』だと言う体だった。ひとらんらんの周囲の人間が、そうであったように。
A。
空軍元帥。
病を患って居て、その為に心臓に痛みがある事がある。先の時間が、決まっている。
空を、愛している。
……そう思うと、ひとらんらんは、今までの、酷く人当たりの良い笑顔を浮かべる、やや静かで穏やかなAが、本当に
(本当は、違うのかも知れない)
若草の中に笑っているAを、凝視する。
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遥彼方 - 。負け犬団長さん» コメント有難うございます！その辺りは本当に書いていて楽しかったので、そう言って頂けて感涙です。是非ゆっくりと楽しんでらして下さい〜 (2020年3月2日 1時) (
レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
。負け犬団長(プロフ) - 主ちゃんの怒ったシーンの描写が普段穏やかな主ちゃんとのギャップ？で読んでいてとでもドキドキしました！それと主ちゃんの怒りがひと段落したところでの主ちゃんの空への思いが文章からあふれていてとてもきれいです！ (2020年3月1日 22時) (レス) id: 10fa209271 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 瑠奈さん» コメント有難うございます！前作では大変お世話になりました。勿体無い程のご評価に舞い踊る程の喜びを感じております。此方こそ有難うございます！先は長いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 (2019年12月7日 16時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈 - 蒼から来ました〜前作も感動し、今作の面白さ、読みやすさに感激している今日この頃です。ありがとうございます (2019年12月7日 14時) (レス) id: 8b40ad9508 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» 有難うございます！続編移行に注力します……少し（？）お待ちくださいませ……！ (2019年12月7日 1時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2019年11月13日 0時
