[wrwrd]白に包まる

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寒い日々の中に、ほっと息を吐くような暖かさが増えて行っていた。
爛漫の春も、もう近い。


(多分まだ寒いけど)


Aは執務室の窓に差し込む夕日を、振り返る様に見上げていた。


(飛びたいな)


冬と春の間。陽光柔く、風の冷たいその空は、Aの好きな時期の一つだ。
勿論、Aにとって、嫌いな空などこれ一つもありはしないのだが。



「Aさん、今日の業務は之で終了できますが、……如何なさいますか？」


フローラの遠慮がちの声に、現実にAは引き戻される。机を挟んで前に、フローラはファイルを抱え込みながら立って居て、振り返ったAの表情を窺っていた。


「嗚呼、……」


Aはそう相槌にも似た声を返しつつ、考える。
明日以降の業務をずらし込んですると云うのも選択肢としてあるのだろうが、さて、どうしたものか。


Aはフローラの方を見つつ、彼女とはつかない中空を見詰めていたが、軈て、




「……飛ぶよ」




と、言った。


「『イーグル』、用意しておきます」


フローラは、まるで自分がAであるかのように嬉しげだった。フローラは、こう言う処がある。少し、Aに似ている。



『イーグル』とは、『イーグルクラフト』の略称。


『イーグルクラフト』とは。
超大型の鳥にエンジンなどの部品を付けた、空を往く乗り物である。


だが、重々しい部品に加えて人を成人2〜3人を乗せる事の出来ると言う程の、余りに特殊なこの『鳥』は、詳細は重要では無いので省くが、骨格構造が普通の『鳥類』とは異なっている。


少し具体的に言うと、一般的な空を往く鳥類は、骨格を疎(・)に造る事により、体を浮かせる事ができる。一方哺乳類は骨格が確り作られるので、鳥類のように空を往くものは先ずない。


だが、この鳥、事実の方を言うと体つきは寧ろ哺乳類の方にやや近い。体を『浮かせる』事よりは、地を往く鳥に得意な事は近いが＿＿かといってそうと言う訳でもない。

低空飛行であればそれなりに長く飛ぶ事も可能だと言うのである。


此の特殊な体に補助エンジンを付け、空を往く鳥類のように自在に飛べる様にしたのが、『イーグルクラフト』である。
基本的には既述の様に、少人数の乗り物だ。


この『イーグルクラフト』は、ともすれば戦争の意思アリと誤解されやすい飛行機に取って代わり、先進国の殆どは之で自国内を見回りをしたりする。



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イーグルクラフト。

大型鳥を使う乗り物の一種。

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