ひとめぼれ

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「はい、ココア。召し上がれ」


噴水のヘリに座ったまんまの神山くんの隣に腰掛ける。


経験上、避けられるかて不安やったけど、
神山くん、


「ありがとうございます」


そう答えて、少し笑った。


その笑顔が無理してるように見えて。


俺まで胸が痛くなる。


「なんで、ココア一択やったんですか？」


「神山くん、ココア好きやんか」


「なんで知ってるんすか」


「それは、いつも神山くんを見てるから」


あかん、これはアウトやな。

やばいヤツ認定や。


「あっ、いや、その、」


焦って言い訳しようにも、何も浮かばへん。

神山くん、引くかと思いきや。


「重岡さんは、いつも朝一番に来て、
シャドーボクシングしてはりますよね」


お返しみたいに、そう言うてきてん。


「うん、見られてたか」


「たまたま、早く着いた時に見て。
いつもしてるて、他のスタッフさんに聞いたんで。
ボクシングやってはるんですか？」


「そやねん。
身体が資本の仕事やし。
アクション系の仕事来ても使えるしな」


「・・・」


困った顔してるやん。


「俺、なんか変なこと言うた？
あ、興味ないか、俺のことなんか」


「そうやなくて。凄いなあって、思って」


「え？」


「重岡さんて、いつもふざけてはるから、
真面目な話出来へん人なんかと思ってました。
いうか、天性の才能だけで演じてて、
不真面目な人なんやて思ってました」


「可愛ええ顔して、グサッとくること、サラッと言うな？」


「あっ、すいません」


「そんな天才やったら苦労せんよ」


「そうですよね・・・」


めちゃくちゃ落ち込ませてもうてる。


「神山くん、あのさ」


「俺、最低ですよね。
勝手に決めつけて」


「いや、ええよ。誤解されやすいし。
誤解される言動取ってんのも事実やしな。
照れくさいんよ。
真面目な顔すんの」


「損してますね」


「そやな。まあ、しゃあない。
けど、神山くんも誤解されやすいんちゃう？」


「え？」


「可愛ええし、
おとなしいて控え目やからさ。
ほんまは仕事に対して、
誰より熱意と拘り持ってて、
真剣やのにな。
うん、度を超えて真面目よな、自分」

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