ひとめぼれ

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なんで俺、警戒心もなく、
この人に、家の場所教えてしもたんやろ。


あの時は酔うてたし、
自己嫌悪で、心、ぐっちゃぐちゃやってんもん・・・


まさか、あの有名俳優の重岡大毅が、
一ヘアメイクの俺を本気で好きやとか、思わんし。


「あれから、ランニングコースはこの辺りにしてるけど、
会えたんは、今日が初めてやで！
運命やろ？」


「それは偶然です。
重岡さんちって、この近くなんですか？
あ、俳優さんに聞くことちゃいました。
ごめんなさい」


「俺んち、こっから7キロくらい」


「はあっ？！」


驚き過ぎて、立ち上がってしもたし。


「そんな長距離走ってるんすか？」


「鍛えてる、言うたやろ？」


「役作りのために・・・」


すごいプロ根性や。


「それもあるけど。
今は、神山くんを守るためもある」


「頼んでませんし。
俺、男やし」


「言うたやろ？可愛いに男も女もないって」


「じゃあ、俺、これで」


「送るから、待って」


無視して、店の外に出ようとしたら、


「あっつ！」


後ろから大声聞こえてきた。


声の主は重岡さん。


大急ぎでカフェモカ飲んで、舌、火傷したっぽい。


そんなに俺とおりたい理由が分からへん。


俺、別にそんな特別な魅力あると思われへんし。


重岡さん、過去に何人か、
女優さんや歌手、アイドルの人と噂なってるけど、
みんな女の人やもん。


もしかしたら、バイなんかも知らんけど、
周りに、可愛いイケメン俳優さんもいっぱいおるやろし。


なんで俺？


きっと、チヤホヤされてるやろうから、
なびかへん俺が気になってるだけやな。

俺が振り向いた時には、
きっと、他所行ってて、そばにおらへん。


・・・悔しい。


あほやろ、俺。


「神山くん、待ってや！」


追っかけて来て、勝手に隣を歩き出す。


「ついてこんといて下さい」


「送る」


「送ってもらう理由ないですし」


「可愛い子の夜道の一人歩きは危ない。


「また言うてる」


あ、敬語抜けてもうた・・・


２個も年上の人やのに。


聞き逃してくれたらな・・・


「やった、タメ口で話してくれた！」


はあ・・・


やっぱな、この人、意外にも鋭いねんて。

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