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「……」
「でも、本当は、だれも傷つけたくなかった」
「……うん」
「そんなおいらの心が残っているうちに……。おいらの魄がまだ、暗い気持ちに飲み込まれる前に、陰気を払ってくれたのは、おねえちゃんと、そこのおにいちゃんだよ!」
「……俺は、何もしてない」
ぷい、と急に話を振られた青蘭はそっぽを向いたけど。
その頬が赤い。
「人の勝手がお前をこんな風にしちまったんだ。いっそ、人里に行って祟ってやればよかったんだ」
それでも、憎まれ口をたたくのは彼らしい。
……人を憎んでいる節のある彼にとっては、一部は本心かもしれないけれど。
男の子は苦笑した。
「そうかもしれないね。でも、おいらがこの世に生まれたのも、人の気があったからこそだろ? ……おいら、短い間でもこの山に生まれて、広い鞍馬を駆け巡れて幸せだった。だから、おいらはやっぱり、祟りたくはなかった」
「……まぁ、お前の気持ちはお前だけのものだ。それが侵されなかったのはよかったな」
青蘭がぶっきらぼうに言う。
ちらりと私のほうも見ながら。
たぶん、私を気遣ってくれての発言なんだと思った。
「あはは! おにいちゃんは素直じゃないね」
「……っな!」
青蘭が、何故か焦ったような表情を浮かべた。
「まぁ、大鵬様が相手じゃ分が悪いだろうけど。おいらを助けてくれたし、応援しとくよ!」
(……?)
いったい何の話だろう。
よくわからず首をかしげていると。
パアアアァァ!!!!!
急激に男の子の周りが濃く輝きだす。
「どうやら時間みたいだね」
「そんな……!!」
急激に彼の魄が、辺りの大気に同化……吸収されていくのが分かった。
「大鵬様、長に、ごめんなさいって伝えてください。それから今までお世話になりましたって!」
「あぁ」
大鵬が深く頷く。
「それから……」
男の子が私に手を伸ばした。
「……?」
私も手を伸ばす。
男の子の手が私の手を取って……。
「……っな!」
私は思わず赤面した。
周りも絶句している。
小さな男の子が、恭しく私の手の甲に口づけをして。
……幸せそうに微笑んだ。
「最後に、好きだなって思える女の人にも会えて幸せだよ! ありがとう!!」
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時