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*

『――。……そうか』

暫くの沈黙の後。
ぽつりと、一言だけが辺りに響いた。
そう思ったら。

『はっはっは!! 我も愛しているぞ!!!』

底抜けに明るい声が続いた。

『だから、我はAにも生きてほしい』

「……うん」

『お前の暴走した神通力は我がすべて持っていってやろう』

「……」

分かっていた。
この空間は大鵬の結界。
私がその中にいるのは、大鵬が私の力を抑えるためだって。

『人の信心の薄くなった今、我に残された力は、そのくらいだ』

「ううん。十分だよ」

私はこの結界自体が大鵬自身なんだと、ようやく理解した。
もう。大鵬が人の姿をとることはできないのだろう。
それでも、私の願いを聞いてくれた。
溢れ出る私の力ごと全て、――彼が最期の力で包んでくれたんだ。

(……それで十分)

私は今にも目からあふれそうになる気持ちを抑えようとして。
ぎゅっと瞼を閉じた。
そんな私に優しく語り掛ける大好きな声。

『――ならば、A。我の最後の花嫁として、我の代わりに、人と妖……すべての『もの』達の未来(さき)を、見届けてくれないか?』

「……それが、あなたの望みなら」

私は頷いた。

『一緒に生きてやれなくて済まない』

「ううん」

今度は首を横に振った。

「私……これ以上、誰かを傷つけないで済むのなら、良かったんだと思うよ」

やっと目を開けて。
もう一度笑って見せる。
大好きな人の姿はもうなくても。
この空間自体が大鵬ならば。……彼には見えているはずだから。

「本当はずっと一緒にいたかったけど。もしあなたが果たせない望みがあるのなら。大鵬――、あなたの最後の花嫁として、私がその願いを叶えます」

――大鵬の望み。
この世界の命が、未来(さき)に向かって生きていくこと。……幸せになる努力をし続けること。
あなたの愛した生ある「もの」が生き続けること。

(――それが、あなたの意志なら)

「私は、ずっと未来(さき)まで、人の営みを見守り続けるよ」

温かな光のなかで私は誓った。

『――それでこそ、我の花嫁だ!』

姿の見えない大鵬の笑い声が響く。

『だが、我は、Aの幸せも願っていることを忘れるな』

光の中に一陣の風が起こった。
その風が優しく頬を撫でた。
体中がぽかぽかと、温かな力に包まれていく。


――そこで、私の意識は再び途絶えた。

終章『生きる、そして』→←▼



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設定キーワード:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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