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ページ23

「俺の母親は稲荷の神として小さな山の祠に祭られていた」

「……」

「でも、そこに武士(ひと)が、狩りにやってきた」

「……」

「俺はただ、人間がもの珍しくて、その様子を見たかったんだ」

「……うん」

「気が付いたら、俺は奴らに射られてた」

「……!」

「意識が遠のく中、俺の母親が俺をかばう姿が見えた。……最後の力を振り絞って俺を遠くに飛ばそうとした。母さんの温かな気が俺を包んだと思った瞬間に俺の意識が途絶えた」

「……それじゃあ」

「気が付いたら、俺はあの館にいて、朱の手当てを受けていた。母親がいなくなったことを聞かされて、行くところがないならここにいればいい、と大鵬様が俺を拾ってくださったんだ」

初めて聞く、青蘭の過去。
お母さんとの悲しい別れ。そして、新たな家族との出会い。……それが今の青蘭を作っているんだと思った。

(青蘭だけ逃げて、なんて言えない)

私にとって、大鵬達が大切な家族であるように。
……青蘭にとっても、彼らは大切な家族なのだ。

身も心も傷ついた彼を救ったのは、まぎれもなく大鵬達だ。
いつも憎まれ口をたたいていたけれど、本当は朱ノ姫のお小言が青は嬉しかったのかもしれない。
私が初めて朱ノ姫に会ったころのことを思い出す。
面倒見がよくて、優しくて。たくさん世話を焼いてくれた。……青のことも心配していた。
私にとってもお母さんのような、お姉さんのような存在だった朱ノ姫。
きっと、青にだってそうだったはずだ。

――老師父の心のこもった勉強の時間も、彼の心を癒したに違いない。
世界の有り様、その歴史……たくさんの知識をいつも教えてくれた。
その話は難しくてわからないこともあったけど。
わかるまで、根気強い笑顔で、繰り返し話してくれた。
それはかたくなな彼の心を少しずつ解したかもしれない。

大鵬は……。
いつも家族を大切にしていた。
いつだって私や青を心配してくれて。
そして笑ってくれた。
凄く力があるのに。それを鼻にかけたりは一度もせずに。
ただ、家族とともにいることを好み、その幸せを願うあの人は。……私にとって大切な夫は、青にとっては兄であり、師であり……何よりも父親に近い存在だったのかもしれない。

そう思ったら、自然とほほ笑むことができた。
そっと、青蘭の手を握った。

「じゃあ、一緒に行こう? まだ生きている家族に会いに!」

「あぁ」

青蘭が頷いた。私たちは燃える館へと、雲進を進めた。

一九章『地獄』→←▼



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設定キーワード:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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