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「――人が、都をあの山あたりに作ろうとしてるのは知ってたな」

「……噂には」

「人間の偉いやつらは大陸から渡った『仏教』を信心している」

「うん」

「……どういうことか、わかるか?」

「え?」

「今まで神とされてきたモノが、神として認識されなくなるということだ」

「……!」

私は絶句した。
神様方を神様と思わないなんて、そんなこと私には考えたこともなかった。
だけど、人が大鵬達を信じる心が弱まったら、そのぶん、その力が弱まるのは分かった。

「じゃあ、大鵬の力が弱まるってこと?」

「……。力が弱まるだけじゃない。神と認識されなくなった大鵬様はただ『人喰い』として人に仇なすモノとされる」

「な……!」

私は大鵬がどれだけ人を愛しているかを知っている。
人である私にくれた優しさは本物だったし。
人のために、惜しげもなくその神気を使ってくれていた。
人はそれを忘れてしまったのだろうか。
私も人間。……だけど、神様方がくれた慈しみを忘れようとする心は理解できなかった。

「……それで、京の人はどうするの?」

「……神でない大鵬様は鬼として、異形の化け物として人は見ることになる」

「そんな! だから、私を館から出したの!? 私はずっと大鵬達を神様として想っているのに!!」

「――A。大鵬様は自分が周りにどう思われるかは気にする方じゃない。あの方は己を『化け物』と言われても笑って許していた」

「……」

「でもな、A。人間はどこまでも残酷になれるんだ」

その声には怨りが混じっていた。

「残酷……。さっき、朱ノ姫が打って出ているって大鵬が言っていた。……あれはどういう意味?」

なんとなく答えは予想できた。
でも、否定してほしかった。
だから、祈るような気持ちで、震える声を絞り出した。

「今、人の兵が俺たちのいた山に押し寄せている。『自分たちに仇なすモノ』として、大鵬様達を討伐する名目で。……朱は、人が望むように鬼として振る舞い戦っている」

「なに、言ってるの……?」

朱の姫が戦っている……予想はできた。
でも、なんで。
なんであの優しい火の神様が『鬼』になるのか。
……私には理解できなかった。

「人がそう望んだからだ……」

苦々しそうに吐き捨てて。それから、ゆっくりと告げられた。

「そして、もう一つは俺たちを逃がすためだ」

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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