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朱ノ姫もよく花を贈ってくれる。
「女なら、好いた夫の前では装いも整えねばのう」そういって、彼女は持ってきた花を速攻で私の頭に飾ることもしばしばあった。

おじいちゃんの老師父はそういうことはない。
青蘭も、特に私の髪形に言及することはなくて。……彼が飾りを用意してくれるのは、喧嘩の後の仲直りのとき、たまにあるかないか。

だから。
珍しいと思った。それも、今は秋の始まりの時期。
夏の初めに花を咲かせ、秋の最後に液果をつける榊の枝に今あるのは艶めく濃い緑の葉っぱだけ。
この時期になぜ、榊なのだろう。
そう思っていたら。

「榊は魔を払う力がある。最近の外は陰気が多いからお守りだと思っとけ」

私の疑問に早々に答えが返ってきた。
守り役としての心遣いだろうか。
ぶっきらぼうな青蘭の優しさが嬉しくて、すこしにやついてしまう。
いつもなら、気持ち悪い、とか憎まれ口を言われそうな場面。
でも。
青蘭は何も言わず、ひとくくりにした髪に私が榊を留める姿を見ていた。

「これでいい?」

「あぁ」

榊を髪につけ、袿を羽織った私に青蘭が頷いた。

「羅刹も忘れるなよ」

「はーい」

私は枕元に置いてあった、夫から贈られた鉄扇を寝巻に巻いた純白の細帯の間に収めた。
それから先に外に向かいだす青蘭の後を追う。
二人で部屋のふすまを開けたら。そこはようやっと薄い茜がさした空の色。廊下の向こうの池はまだ宵闇の黒。

そこに、雲進がいた。

「乗るぞ」

青蘭に促される。

「え、大鵬達は?」

雲進は、いつも大鵬が乗って移動するのに使っている。
なのに、肝心の大鵬がいない。

「……大鵬様は……」

「? うん」

妙な間。
でも、その後の答えは、自由奔放なあの夫らしい内容だった。

「たまには、自分で飛びたいそうだ」

「え」

思わず吹き出しそうになったのをこらえる。

「大鵬様がご自身の力で飛べるのは、Aもよく知っているだろう」

「うん、まぁ」

確かに、と頷く。よくよく考えると、大鵬は私と一緒に移動するときは雲進を使うけど。
彼一人なら、老師父から習ったという風を操る術で出かけることもしょっちゅうだ。

「じゃあ、大鵬や老師父は自分で飛んでくの?」

「あぁ」

「朱ノ姫は?」

「朱のババァには眷属がいるだろう」

「そっか」

ここにきて7年の間に、朱ノ姫についても、その眷属についてもよく知るようになっていた。

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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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