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「我は、人も妖も好きだ。故に、陰陽の気は、どちらも程よくあるのが望ましい。人は陽の気がなくては生きていけぬし、人の喜びの気も我らの力になる。しかし、我らが生まれるには陰気も必要だからな。程よく、我らを願ってもらえれば有難いのだが……」

「程よく願う?」

「そうだ! 主ら人の祈りが我らを強くする!」

だから、陰陽の気はどちらも均等な世の中が本当はいいらしい。
ちょっと難しかったから、あとで老師父に聞いてみた。

人が生きるには、嬉しいと思う陽の気はもちろん必要。
だけど。
それと同じくらい、人が向上するためには誰かを羨んだりする、陰気もなくちゃ駄目らしい。
そして、何かを成し遂げたい! と強く願ったりして、人は神様を信じて祈る。
……それが大鵬達、神様方の力の源らしい。
だから、陰陽の気はどちらも必要なもので、その量が同じくらいなのがちょうどいいのだと教わった。



*

――陰陽の気は、どちらかが強すぎて均衡が崩れると、具合が悪くなる。
今回の日照りは、正に強すぎる陰気が原因だった。

私は岩山で、大鵬に質問した。

「陰の気がこの山に集まると、どうなるの?」

「時折、山に積もった恨みの気に捕まってしまうものがおる」

「捕まる?」

「そうだ」

深く頷かれた。
それから、大鵬が軽く額に口づけをくれた。
本当に軽い。
触れるだけのもの。
その瞬間、私の体を大鵬の神気がつつんだ。
ざわざわと、真名をもらった時に私に入った大鵬の気が体の内で反応していた。
少し、胸のあたりが熱い。

「雨の神も捕まっておる」

「え……!?」

どうやら、雨の神様は、この山に溜まった陰気のせいで、身動きが取れないらしい。
だから。
集落に雨を運べなかったんだと知った。

「我一人では、この山に集った陰気を払いきれなかったが……」

大鵬は右手を掲げた。
私を背後にかばうような形に立って。

「今日はAがともにいる。花嫁殿の祈りが我を強くするからな! 今日は勝てるぞ!!」

不敵で、自信に満ちた声だった。

――ぽわん。

その右手に、黒銀の光が生まれる。
大鵬の気が、そこに凝縮されていくのを感じた。

「花嫁がいたら……? 私は何をしたらいいの!?」

私がいると「今日は勝てる」、とはどういう意味なのだろう。
ただ、私の中の大鵬の気が主の呼びかけに反応するかのように、さらに熱くなっていく。
大鵬はこれから何かをしようとしている。
なら、手伝わなくてはいけないと思った。

十二章『魍魎と、はじまり』→←▼



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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます!  誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時

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