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「ほっほっほ。そうですのう。儂は、鴉天狗の妖……まぁ、長生きしているだけが取り柄の爺じゃが、そのぶん、知識はありますからな。A殿が気になることがあらば、いつでもこの老いぼれに聞いてくだされ」
「はい。えっと……老……師父?」
朱ノ姫に気軽に話しかけるよう言われていたけど。
流石にかなりの経験を積んだ様子の老人を、愛称で呼ぶのには抵抗があった。
だから。
ともかく、様だけは抜いてみた。
そうしたら。
「ほっほっほ。気軽に「老」と読んでほしいところじゃが。無理強いはしますまい。A殿の呼びたいように、負担にならぬようにしていただけるのが一番じゃからな」
優しく笑う老人に、胸がきゅんとした。
「わらわはもう、自己紹介は良いかのう? かわりにわらわの名の由来でも話すかの。わらわは火気(かき)から生まれた妖での。火を操る」
そういって、口からまた、大きな火の蛇をとりだした。
「Aを乗せた、火蛇(かじゃ)だが、これもわらわの眷族の様なものだ」
「朱ノ姫の眷属?」
「わらわがただの蛇に、火気を分け与え、飼っておるもの、という意味だの」
「……朱ノ姫の神気をあげてるってこと?」
「まぁ、人から見れば、そういうことになるのかのう?」
そういって、彼女は大鵬をみた。
「そうだな。そして、我は大鵬だ! この館の妖(あやかし)を束ねておる! Aは気軽に大鵬と呼べ!」
「あ、うん……」
相変わらずの大鵬に思わずはにかんだ。
気軽に呼ばれることにこだわる大鵬や朱ノ姫。
自由にしていいと言った老師父。
何故だか人を嫌う青蘭。
館のみんなに花嫁として、紹介されたこの瞬間。
それがきっと、始まりだったのだと思う。
――私が生きてきた七年間で。
そして、これから過ごす長い年月のなかで。
彼らに出会えた。彼らと過ごせた。……長いようで短い、けれどもとても幸福な、私の少女時代。
それが、そうとは知らずに幕を開けた瞬間が、きっと……、この時だったんだ。
*
「さて、屋敷の者への紹介も済んだところで、A出かけるぞ!」
そう言って、大鵬は私を肩に乗せたまま歩きだした。
「うん」
どこへ? とは聞かなかった。
だって、着替えに行く前に、大鵬は約束してくれていた。
――雨を集落に降らしてくれる、って。
そのために出かけるんだと思った。
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時