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「青(せい)、やめろ。朱(あけ)も、青を刺激するな」
「大鵬殿は甘い。年上を敬えぬ子どもをしつけるのは、年長者の務めではないかのう?」
「ただ、長生きしてるだけの火喰いのばばぁが、えらそうに……」
「そういう青蘭は、まだ100年も生きぬ、ただの管狐ではないか……。そんなそなたを、かいがいしく面倒を見てやったのは誰だと……」
「頼んでない!」
(えーと……)
階段の上と下で、激しい火花が散っている気がする。
とりあえず、朱ノ姫は、火にまつわる神様。
青蘭様は、狐の神様。……喧嘩の内容から、そんなことを分析していた。
でも。どうしていいか分からず、顔はさげたままだった。
すると。
「いいかげんにしろ!」
大鵬の厳しい声。
「青……今のはお前が悪い。朱に謝れ」
「……。大鵬様がそう仰るならば。……朱ノ姫……悪かったな」
なんだろう。
青蘭様と言う方はたぶん、物凄く。……分かりやすい。
大鵬と、朱ノ姫へでは、言葉遣いも、声のトーンもまったく別人が発しているように変わる。
気難しい方なのかな、と思っていると。
朱ノ姫が苦々しげに大きなため息を吐く気配がした。
「……。いまいち、心がこもっておらぬ気もするが……まぁ、大鵬殿に免じて、今回は大目にみようかの。花嫁殿……、Aを困らせるのはわらわの本意では無いからの」
「うむ。朱、済まぬな。さて……」
ス――、と絹の擦れる音がした。
カタン。誰かが階段を下りてくる足音。
カタン。カタン。
しばらくして。
その足音は、私の前で止まった。
「A、顔をあげよ」
すぐ真上から、大鵬の声。
「……」
私はゆっくりと顔をあげた。
すると。
「うむ! 流石、朱だ。良い仕事、ご苦労だったな。 似合うぞ! A」
私を顔を見るなり、嬉しそうに弾む声。
同時に。
力持ちの腕で抱き上げて、嬉しそうに笑う大鵬。
その笑顔が眩しくて、ちょっと照れくさくて、目をそらしてしまった。
少し、頬が熱い。
「あ、ありがとう……」
掠れた声でお礼を言うと。
「はっはっは! 我は思ったことしか言わぬ!! 照れる必要はないぞ!」
そういって、私のお腹に左手を滑り込ませて、高く持ち上げた。
その勢いで、私の体は大鵬の右肩へ。
思った以上に広くて、ごつごつした肩だった。……そこに座る形になった。
「え、あの!!」
「A、大鵬殿の好きにさせてやれ」
やれやれ、と首をふる朱ノ姫だったけど。
頬は緩んでいた。
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時