夢物語 ページ36
「どうやって薄氷病って見つかると思う?」
先生が突然、そう切り出す。
私は少し悩んで
「私みたいに運ばれてくる人とか…からじゃないんですか?」
と言った。
しかし、先生は違うんだな、と腕を組んだ。
「理由を知れば、なんで孤独がこの病気に関わるかがわかるよ。
単刀直入に言うと、Aちゃんの発見方法はむしろとても珍しい。」
先生は、両手をお手上げ、様な形に広げてそう言った。
「多くの場合、自ら命を絶った人の遺体からこの病が見つかるんだ。
そして、詳しく話を聞いたり、遺書を読むと、いじめにあって不登校になった、とか1人ぼっちだった、とか…。
死んだ本人が、強い孤独を感じていたケースが多かったんだ。」
その時、やっと理解できた。
薄氷の様に、溶けられないで残されて、儚く消える。
薄氷病は、周りから取り残されて、1人寂しく死ぬ。
さらに言えば、氷の様な色をした痣に、雪のような白髪、身体中が冷たくなる、まるで氷を連想させる症状ばかりだった。
だから、薄氷病なのか。私の中で納得がいった。
「Aちゃんは、死ぬのは怖くない?」
と、先生が突然聞いて来た。
私は率直で「怖くない」といった。
「…そっか。
この病気は死後の人から見つかることが多いから、治療法がまだ確立されてないんだ。」
先生は少し目を逸らしてそう言った。
「だけど、何もしなきゃ死ぬ…。」
「…例外とかなかったんですか?」
「数件だけ、あるよ。それに、全部共通してる。だけど、医学的には奇跡としか言いようがない。」
根拠が、ない。と悔しそうな声で私に告げる。
私は少し気になって、どんな共通点なのか聞いてみる。
「うーん…例えば、長年心を閉ざして来て人が信じられなかった人が、たった1人信じられる様になったら治った、とか。」
先生は「あり得ない話だよね。」と言った。
私は、ただ微笑む。
「あ…それでね、病院で出来ることは何もないんだ。この先、退院して倒れたら運ばれるを繰り返す。
だから、容態が安定した時即退院になる。」
「そうなんですか。
わかりました。」
私は淡々と、答える。
何もできないし、死ぬかもしれない。
漠然とした話だ。まるで夢物語じゃないか、と思った。
「…そう言えば、倒れる時Aちゃんは幻覚とかみたの?」
と、先生が興味深そうに聞いて来た。
私は全て話した。声は違うけど、その時1番恐怖としていた人たちが見えた、とか。
その日何があったのか、とか。
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あ - 内容がすごいわかりやすいです。続き待ってます (2020年5月7日 22時) (レス) id: 2b1a6cecc8 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - kajjjenさん» 読んで頂き本当に感謝です…!!それに面白いなんて言って頂けて嬉しいです…!!応援、ありがとうございます、更新頑張ります!! (2020年4月6日 17時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 清川さん» 全然わかりやすいっすよ…!!そしてな、なんと!!??そんな…嬉しすぎます…!!頑張ります!!本当にありがとうございます!!嬉しすぎて…(´;ω;`) (2020年4月6日 17時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
kajjjen - コメント失礼します!初めてこの作品を読ませてもらいましたが本当に面白いです!応援してます(^^) (2020年4月6日 9時) (レス) id: 6e12a7e235 (このIDを非表示/違反報告)
清川 - hitoesasamiさん» 俺、文作るの下手だから、伝わってよかった^^ログイン出来てないからお気に登録できないけど、ログインしてたら絶対お気に登録してた。しかも俺の中で☆100くらいついてるw頑張れ (2020年4月1日 20時) (レス) id: bdf93be9d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hitoesasami | 作成日時:2020年3月26日 3時