理想のままで【HQ】

梟に掴まれた子猫 ページ21

引っ張られて連れてこられたのはコンビニだった。
「ちょっと待ってろ」と言って、クロはコンビニの中に入った。
そして、秒で帰ってくる。
2個入りのパンを一つ買ってきた。


「ほら食え。今日はAの登校記念で俺の奢りな。」


と、ドヤったクロを横目に私たちはそろそろと逃げ出す。
そして、ある程度離れた頃。


「俺、要らない。」

「私も…。」


と振り返った。



「コラ研磨！逃げんな！おい！A！」


と、全力でクロが追いかけてくる。
近くもないが、そんなに遠くもなかったから、あっという間に捕まった。


「食え！」


後ろから、口に何かを突っ込まれる。
口の中が卵でいっぱいになる。
研磨も、同じ目に合っているようだ。


「ほれ、飲め！」


と、後ろから野菜ジュースを渡される。
やっとの事でパンを飲み込んで、もらった野菜ジュースを少しずつ飲む。
クロはとても満足そうな顔をしていた。
その顔を見たら、何故か私も嬉しくなった。


だけど、そんな思いはすぐに絶望に叩き落とされる。
学校に着くと、みんなバラバラに別れる。


心の拠り所がなくなる。

そうわかった瞬間、

すごく深い、沼のような。

どろどろとして抜け出せないような。

そんな、孤独を感じた。



教室に入った瞬間、


「あれあれ？Aちゃーん。今日は来たんだね！」


と、私が恐れていた声が、した。

心臓を鷲掴みにされたような気分になる。
梟に掴まれた子猫はきっと、こんな風に鋭い爪で容赦なく潰されるのだろう。

研磨もクロも、誰もいないこの教室で、
私は絶対的な孤独になる。

マリーアントワネットみたいに、自分勝手で横暴だと周りに囁かれて、ついこの間まで仲が良かった人が処刑人となる。


「バレー、やんないの？
自分勝手なリベロさん。」


そう言って、私はボールを投げられる。
その人たちが投げるボールは、どんなスパイクよりも痛い。
力任せに、他人を殺すように、投げるのだからそりゃあそうだ。


「おーい！リベロさーん！
羨ましいですね〜！誰もボール取ってくれなかったのに、ベストリベロ賞取っただけで、有名人になってさ。
ボールが取れなかっただけなのに、なんで私たちが全く知らない観客の人から責められなきゃイケないわけ？」


と責め立てられる。
かき氷機のように、容赦なく粉々にメンタルを砕いていくのがわかる。
もう、私に砕かれるメンタルは残ってないのに。

なんで、頑張っちゃったんだろうな。

そう、後悔した。

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