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真実に勇気を ページ28

痛みも悲しみも辛さも何もなかった。
その代わり、楽しみも何もなかった。


ゆる、ゆらと一定の速度で私は揺れている。
足は浮いてる感覚なのに、体は支えられている。
ゆら、ゆらゆら。


体の左側だけすごく温かくて、心地がよかった。
私はまるで寝ている小さい子の様に、
体をその温かさの方に寄せる。
すごく心地が良くて、楽に呼吸ができて、
でも私の目は重く開かなかった。

もっと寝ていたい。
目を、開けたくない。

私の中にそんな欲が芽生える。
私はその欲に従うことにした。


夢を見ることも、深い眠りにつけることもなかった。


ただひたすらに心地が良かった。
揺れる体も、支えてくれているものの温かさも、何もかも心地が良かった。

ずっと、このままが良い。


でも、食べ過ぎると胃が痛くなる様に、脳が眠ろうとすることを拒んでいた。
温かさを逃さない様、ゆっくりと目を開ける。

世界は真っ暗だった。
いや、夜空が見えた。
さらにいえば、見たことがある景色だった。


「…だい…う…か?」


小さく唸り、瞬きを数回する。
私を覗き込む、顔が一つ。
そして体の痛さがなかった。


「…大丈夫か?」


私は体を起こす。
ベンチに中也さんは座っていた。
そしてここは中也さんと初めて会った公園だった。


「…なんで中也さんが?」

「手前があんな道の真ん中で倒れてたんだろ。」


…嘘だ。
だって私は…。
はっと、息を吸う。
今までのことが頭に濁流の様に流れる。


「探偵社は…芥川さんは…?」

「探偵社は無事だ。アイツは撤退させた。」

「よかった…。」


私は力なく座り込む。
座り込む私の元に中也さんは駆け込んできてくれた。
そして、私の脇に手を差し込み立たせてくれた。


「無理すんな。」


私をまるでぬいぐるみの様に軽々持ち上げ、ベンチに座らせる。


『彼は人喰いが嫌い』


ふと、その言葉が私の脳裏を過ぎる。
その瞬間、緊張感が体を硬らせた。

私はゆっくりと口を開いた。

心臓の音が、口から漏れそうなほど怖かった。

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設定タグ:文スト , 転生 , 東京喰種
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hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» >>また、他にも評価が高い作品が多い中で、この作品を読んで頂きありがとうございました。 少しでも楽しませられたら幸いです。 本当にありがとうございました (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» ご指摘、ありがとうございました。本当に助かります…orzすぐ、誤字や誤った設定をしてしまう癖があり、誤字などがある作品の印象って悪くなると思うんです…。なので、珈世さんのような方がいらっしゃると本当に助かりますorz >> (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» >>また、文ストと混ると言うことは、文ストは好きだけどグロは苦手、と言う人も読めるような、マイナスな印象を与えず書けていたみたいで良かったです。 最後になりますが、他にも引き寄せられる作品がある中で読んでいただき本当にありがとうございました。 (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» Nightさん、コメントありがとうございます。内容を好んでいただけて、本当に嬉しい限りです…昇天できます…。それと、文ストと混ぜる、そして文ストの世界に転生する夢主が喰種という不思議な設定が上手く惹きつけられる要素になっているようで安心しています…orz >> (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 夜雨ナナトさん» >> 最後になりますが、数多くの作品の中でこの作品を読んで頂きそして、応援していただき本当にありがとうございました (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:hitoesasami | 作成日時:2020年1月15日 0時

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