夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

ナツなんて死ねばいいのに ページ21

突然現れる人食い、私に、地上の人たちは慌てふためく。

この感覚、私は過去に同じような過ちを犯している。
しかし覚えていない、というより全く思い出せない。
だから繰り返す。そんなのわかっている。

私は近くにいた抵抗してくる人達に攻撃をした。
食べはしない。さっきので十分だ。
攻撃はするが、殺さない。

みんな、逃げ惑う中に1人、さっきの会話の声の主がいた。
その人を隅に追い詰める。
逃げ場がないように、徹底的に。


「…中原さんはどこにいるの？」


私はマスクの向こうから目をじろっと合わせる。
小動物のマスクには似合わないほど、私の感情は昂り、攻撃的だった。


「アンタ、やった事がわかってんのか！！」


と、肩を掴まれて、壁に叩きつけられる。
ギロっと、私の目をその人は見る。
そして、静かに、追い詰めた人は


「騙されてるんだよアンタは」


そう言った。
そして、私が犯した罪を思い出した。


全く、同じことをしていた。


『喰種捜査官72人殺し事件』

通称、72人事件。
アオギリの樹によるコクリア輸送車の襲撃事件と同時に起こした私の事件。
あんていくが危ないと、ウソの情報を流されて信じてコクリア輸送車が通る道に配置された喰種捜査官72人を無意味に殺した事件。
その中には有力な、将来有望な人が多く含まれていたために有名になった。




その事件をきっかけに私は…。


私は…。


あ。


そうか。




そうだ。
私はSSレートで、




ナツ、


ナツって呼ばれてたんだ。




私の中で、私の中に流れる喰種の血を恨んだ。
　

もし、喰種の血がなければ。

探偵社を追い出されなかったのに。

もし、喰種じゃなければ。

彼の元できちんと働けたのに。



「人食いは嫌いだって、中原さんは云ってたからな」



そう付け足された。


喰種(ナツ)としての私は要らないとその時思った。

それと同時に私が一番恐れていたことが彼によって伝えられた。
唯一の、この世界で唯一、信頼できるヒトに嫌われる。


一番恐れていたことだ。
『彼は人食いが嫌い。』その言葉が頭を何回も何回も何回も何回もずっとずっと回った。巡った。
そして。




ナツが死ねば、
私の中の喰種(ナツ)なんて死ねばいいのにと思った。

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