18.急所と流し ページ18
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「腰が高い。もっと膝を使うんだ」
はい、と蚊の鳴くような声で答える。
何分、いや何十分たったかわからない。またマグナさんお決まりの、とりあえず、で始まったこのタイマン修行はまだ終わらない。
容赦なく降り注ぐマグナさんの鉛のように重い打撃と蹴りで、素人同然の私の体はぼろぼろだった。
攻撃をよけようとしても、疲れ切った体は思うように動かない。息も上がりっぱなしだ。体は沸騰しているように熱い。
だが、マグナさんの攻撃もやむことはない。
「人間の急所は五百ある」
「ハッ....ハァッ、ハイ!」
返事とともに右フックをかろうじてかわす。少しかすった頬が熱い。
「その中でも、一番狙いやすいのは、」
遠心力をそのままに繰り出される蹴りが綺麗に私の左脛に決まる。
走る激痛とともに声にならない叫びが喉の奥で詰まる。
「脛と、」
痛みで動きを止めてしまったのが勝負の分かれ目だったのだろう。
マグナさんの左手が近づいてくるのがスローモーションのように見える。
「喉仏だよ」
窒息感と激痛、そして視界がスパークした。
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「......ちょっと強すぎたか?いや、そこまで力は入れなかったはず」
「ゔっ・・・げほっ、ごほっおえっ!!!」
喉が痛い、というか息苦しい。意識はいまだ朦朧としたまま、膝をついて立ち上がる。
クソ.....全身が痛い......。
「ふっっつ―-にクソ痛いんですけど....?」
「大丈夫!すぐに慣れるさ!」
「マグナさんのこと苦手になってきました」
「はっはっは!!元気そうだな!」
「なんかいつもよりイキイキしてません?」
「そりゃ、楽しいからね」
そう呟くマグナさんの瞳に獰猛な影を見た気がする。
私の中の第六感が、こいつはやべえ奴かも、と言っていた。
「さあ、続けようか」
前言撤回。確実にやべえ奴だ。
「今日のところはここまでかな」
マグナさんがそう言った瞬間、力がふっと抜けて、コンクリの床に向かって膝から崩れ落ちる。
本当は歓喜の声をあげたかったが、私の口から出るのはヒューヒューという苦しそうな音だけだった。
「よく頑張ったね。明日も気合い入れていこう」
明日もってなんだよ....。
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リュイ - 飛行する女子高生が部分好きですw面白かった! (2021年10月19日 17時) (レス) @page24 id: 2183f1b6e8 (このIDを非表示/違反報告)
緑 - あのー弱火でじっくり飽きるまでじゃなかったでしょうか (2020年10月17日 9時) (レス) id: bc36a2a3f7 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 題名に爆笑しました (2017年6月5日 23時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
みんくる(プロフ) - えーでりひさん» ありがとうございます!!!実際作者はとうらぶ未プレイなんですけどね・・・審神者をしんしんしゃって読んでましたし(; ̄ェ ̄)更新頑張ります( ^ω^ ) (2015年8月13日 11時) (レス) id: 8267781c3e (このIDを非表示/違反報告)
えーでりひ - とてもおもしろく読ませていただきました!!江雪ネタが出てきてビックリしましたwこれからも頑張ってください!! (2015年7月25日 18時) (レス) id: ce3d448fad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みんくる | 作者ホームページ:http://nanos.jp/connector/
作成日時:2014年4月2日 19時