嫌われ者。5【青葉城西】 (ページ11)

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国「A！！」

廊下に出れば違う声に止められた。

その声は勝手に私の足を止める。

『…何？英くん。』

わざわざ待っていたのか。

目の前に立つ英くんを見上げる。

最近ずっと、聞きたかった声。

聞けなかった声。

やっと叶ったはずなのに、今の私はそれだけで高調できなかった。

まるでテレビ画面越しでみているような、

目の前の景色が、白黒で見えるような気さえする。

私の事避けてたくせに…

そんな事さえ思えてしまう。

国「何って…」

英くんが言葉を詰まらせる。

『部活、行かなくていいの？』

私は淡々と聞いた。

気まずいとか、好かれたいとか、もう今更どうでもよかった。

国「なんで…っ、Aが部停なんだよ…」

英くんは苦しそうにそう漏らした。

目の前の英くんは私よりよっぽど悲しそうで、辛そうで。

やっぱり白黒に見えた。

『…』

あぁ、悲しそう。辛そう。

私の中では、まるで他人事の様な感想が浮かぶだけ。

国「俺は、Aがあんな事する訳ないって分かってる。」

『うん。ありがとう。』

苦しそうにそう吐いた英くんを前に、私は少し口角を上げた。

国「だから、こんなのおかしいって…」

『大丈夫だよ。』

何度も何度も言ってきたセリフを言った。

まるで呪文の様に。

国「なんで…？Aはこれでいいわけ…？」

分からないとでも言いたげな表情だった。

英くんのそんな顔は初めてみた。

だって英くんはいつも、なんでも分かっちゃうから。

分からない。は、私の専売特許だと思ってたけどどうも今日ばかりはそうじゃないらしい。